第五百十四話
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第五百十四話 練習する方も
華奈子と美奈子は自分達の部屋の真ん中にそれぞれ座布団を敷いて向かい合ったうえでモーツァルトの曲の練習をしている。その中で。
華奈子はサックスを一極聴き終えてからこう美奈子に言った。
「何とかっていう感じでね」
「コツが掴めてきた?」
「そんな感じかしら」
こう美奈子に言うのだった。
「ちょっとだけれどね」
「そうね。私もね」
「あれっ、美奈子は元々クラシックじゃない」
フルートのコンクールで何度も賞を取っている。元々そちらの方面で知られているのだ。
「だからモーツァルトも」
「慣れてるっていうのね」
「うん。そうじゃないの?」
「そうでもないの」
華奈子の予想とは違いこう答える美奈子だった。
「私もね」
「そうなの?」
「うん。だからクラシックだとね」
「クラシックだとって」
「中に入るのがかえって難しいの」
そうだというのだ。
「バンド、ロックにね」
「フルートだから?」
「元々私のフルートはクラシックの楽器だから」
実はクラウンはかなりユニークなバンドと思われている。サックスとフルート、特にフルートを使うバンドだからだ。
「これをロックに合わせるとなるとね」
「難しいのね」
「そう。だから私もね」
「苦労してるの」
「今回は特にね」
美奈子も何時になく自信のない感じだ。
「そうなの」
「じゃあ一緒なのね」
華奈子は美奈子の話を聞いてこう述べた。
「あたし達って」
「今中々苦労してるっていう意味ではそうなるわね」
「そうでしょ?だから一緒よね」
華奈子はサックスを両手に持ったまま美奈子に話す。
「私達はね」
「全然違うって思ってたけれど」
「サックスとフルートで違うからなのね」
「うん。そう思ってたけれど」
だがそれが、だったのだ。
「難しいっていう条件は同じなのね」
「多分その度合いもね」
「そうだったのね」
こうしたところでも二人は双子だった。サックスとフルートの違いがあっても苦労しているということは同じだった。
第五百十四話 完
2012・8・9
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