第五百十三話
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第五百十三話 アレンジする最中で
ライゾウとタロは華奈子と美奈子の部屋から聴こえてくる音楽を聴いていた。聴いているその場所は家の庭だった。
その歌を聴きながらだ。まずはライゾウが言った。
「何か最近のご主人達ってさ」
「音楽のジャンルが変わったかな」
「あれクラシックだよな」
歌劇場でも聴こえる曲からだ。ライゾウはタロに言う。
「そうだよな」
「そうだね。あれはモーツァルトだね」
タロは耳をそばだててライゾウに答えた。
「ご主人と美奈子さんが吹いたり歌ってる曲はね」
「最近おいらもわかってきたよ」
「わかってきたって何が?」
「いや、モーツァルトの曲がさ」
それがわかってきたというのだ。
「どんなのかわかってきたんだよ」
「大体明るい曲だよね」
「何か朗らかだよな」
「そうそう。モーツァルトの曲って軽やかでね」
タロもこう話していく。
「奇麗な感じだよね」
「それで深みもあるんだよな」
「うん。不思議とね」
「聴きやすい曲だよな」
これがライゾウのモーツァルトの音楽への評価だった。
「幾らでも聴けるよな」
「うん。けれどご主人ってバンドだから」
「クラシックとはあまりというか殆ど縁がない筈だよな」
「そうだよね。それにご主人はサックスだから」
バンドで使いはする。本来はジャズで使うものだがロックでも使えることは使えるのだ。チェッカーズがそうだった。
そのサックスについてだ。タロはこう言う。
「どう考えてもクラシックには使わないけれどね」
「だから一回聴いてもわからないよな。モーツァルトだってな」
「うん。それでも何回か聴くとわかって」
モーツァルトの曲だとわかるというのだ。
「そのうえで聴いてみるとね」
「クラシックだからな」
「何でご主人達が演奏してるのかな」
「美奈子さんはわかるけれどな、まだ」
美奈子はフルートだ。これはクラシックだ。
「それでも。バンドでモーツァルトか」
「ちょっと以上にぴんとこないけれど」
「この辺りがどうにもだよな」
「そうだよね」
ライゾウもタロも言う。
「ご主人達は何を考えてるんだ」
「今回はかなりわからないね」
二匹は華奈子と美奈子が部屋で練習する曲を聴きながら話をする。それは確かにバンドの曲としては妙に思えるものだった。
第五百十三話 完
2012・8・9
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