第五百十話
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第五百十話 アレンジ開始
六人はまずだった。モーツァルトの曲の楽譜を開いた。
その楽譜を見てだ。春奈が美樹に言った。
「何か。キーボードで叩いてみるとね」
「そうよね。ベースでもね」
「奇麗な感じの曲になるわよね」
「軽やかな感じのね」
「そうよ。例外も確かにあるけれどね」
美奈子は二人にも話した。そのモーツァルトのことを。
「モーツァルトの音楽って奇麗で華やかなの」
「ちょっと御免ね」
華奈子はサックスを吹くことを想像してそのうえで口笛を吹いてみた。そうしてからこう美奈子に対して言ったのである。
「あっ、確かにね」
「軽やかな感じよね」
「ええ、何かね」
口笛で吹いてもそんな感じだった。
「そんな感じね」
「演奏しにくい筈の曲でも」
美奈子は話題を変えてきた。今度の話題はモーツァルトの音楽の難易度だ。どの音楽のジャンルでもこれは確かにある。
「それでもね」
「演奏できるの?」
「不思議とできるのよ」
そうだとだ。美奈子は華奈子と他のメンバーに話す。六人は今音楽室のそれぞれの席に座って話をしている。
「フルートでもね」
「どんな難しい曲でも?」
「歌でもよ。物凄く難しい歌でもね」
歌劇では『後宮からの逃走』や『魔笛』である。超絶的なコロトゥーラ=ソプラノの技術で歌われる曲が存在しているのだ。
だがそうした曲でもだというのだ。
「歌えるから」
「幾ら難しくても人が歌えるのね」
「それで演奏できるかな」
「話を聞くと不思議ね、それって」
「天才って言われてるし」
天才という言葉はモーツァルトの為に生み出されたと言われる程だ。六歳で作曲したその才能は尋常なものではない。
「だからね」
「モーツァルトはどんな曲でも演奏できるのね」
「努力すればね」
「努力すればなの」
「そう。努力すれば演奏できるから」
尚モーツァルトは自分では努力をしているという自覚はなかった。作曲をしていないと苦しくなる、楽譜が目の前に浮かんでいると言ったという逸話がある。努力は努力と思わず才能もまた圧倒的だったのである。
そしてそのモーツァルトの曲をだ。今からだというのだ。
「勉強してアレンジしようね」
「うん、じゃあね」
華奈子は美奈子の言葉に頷き他のメンバーも華奈子に続く。そしてそのうえでまずはモーツァルトの楽譜を読んでいくのだった。
第五百十話 完
2012・7・23
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