第五十一話
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第五十一話 小田切君の苦労
「あの博士ですよ」
小田切君は言う。
「それでまともに話がいくと思いますか?」
「はい」
「はいって」
今田先生も大物だった。小田切君も唖然とした。
「あの、正気じゃなかった本気ですか?」
「完全に本気です」
先生も真面目に告げる。
「非常に愉快な方ではないですか」
「あまりにも愉快でこっちは何度も死にかけたんですよ」
これもまた事実であった。小田切君は過去何度も博士のしでかした大騒動に巻き込まれて死に掛けているのだ。そのことを忘れる筈もない。
「南極に隔離されたこともありますし」
「まあ、南極に」
先生は南極と聞いて楽しそうな声をあげた。
「凄いですね。滅多に行けませんよ」
「行きたくもありませんでしたよ」
これが本音であった。
「ペンギンどころかアザラシの咆哮まで聞こえたし」
「アザラシ?」
「ヒョウアザラシっていいましてね」
小田切君はそう説明する。
「とんでもなく凶暴なアザラシがいるんですよ」
「まあ、それは意外ですね」
だがそれは本当の話だ。アザラシと言っても色々いる。中には殆ど猛獣のようなのまでいるのだ。小田切君はそのアザラシについて言っているのである。
「そんなのとか。ラストバタリオンはいませんでしたけれどね」
「そうでしたか」
「そっから帰るまでがまた大変でして」
また言う。
「巨大ロボットに乗って。オーストラリア海軍やら自衛隊やらと戦って」
「ようやく日本まで戻ったのです」
「色々あったのですね」
「色々というものじゃなかったですよ。それからも」
忌まわしい記憶が次々と蘇ってくる。
「異次元人と揉めたり鏡の世界に入ったりと」
「魔法みたいですね」
「そんな甘いものじゃないです」
それは事実であった。
「本当に」
「けれど辞められないんですね」
「待遇はいいですから」
それをまた言う。
「それに何かあの博士は」
ここでふと言葉が出た。
「放っておけないし」
「それですね」
「それだとは?」
先生はここでにこりと笑ってみせた。話が大きく動くのであった。
第五十一話 完
2007・10・10
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