第五百三話
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第五百三話 博士とモーツァルト
博士は研究所、自分の家でもあるその研究所の一室において安楽椅子に優雅に座っていた。そうしてである。
ワインを飲みつつ自分で作ったオーディオで音楽を聴いていた。その音楽は何かというと。
「モーツァルトですか」
「そうじゃ。それを聴いておる」
博士はこう小田切君に答える。
「こうしてのう」
「博士は音楽は」
「結構好きじゃぞ。クラシックもな」
「そうですよね。ただ最近は」
「人体実験や兵器の開発に没頭しておったな」
それで音楽は聴いていなかったというのだ。
「どうもな」
「そういえばそうですね」
「そうじゃ。しかしじゃ」
「それでもですか」
「今は時間に余裕があるのでな」
それでだというのだ。
「こうして聴いておるのじゃ」
「そういうことですか」
「小田切君はモーツァルトはどうじゃ」
「嫌いじゃないです」
小田切君はこう博士に答えた。
「というか結構好きです」
「そうか。好きか」
「いい曲が多いっていいますか」
「モーツァルトは天才じゃ」
聴けば実感するそのことをだ。博士は述べた。
「そしてこのモーツァルトをじゃ」
「聴かれているんですね、今こうして」
「わしは音楽については聴くだけじゃ」
博士はこうも言った。
「こうしてじゃ。オーディオで聴くのも好きじゃが」
「演奏もですか」
「そうじゃ。好きじゃ」
こう言うのだった。
「実際にな」
「博士がモーツァルト好きっていうのは意外ですね」38
「意外か」
「ワーグナーとかベートーベンかと思ってました」
博士がクラシックを聴くとなるとだ。そういった作曲家だというのだ。尚どちらもドイツが生んだ音楽の巨人である。
「けれどなんですか」
「そうじゃ。このモーツァルトもじゃ」
「お好きんですか」
「うむ。では聴いていくとしよう」
こう言ってだった。博士は。
小田切君にもワインを勧めてそのうえで二人でだった。
モーツァルトを聴いていく。その音楽はまさに天才のだった。誰にも真似できない輪舞を奏でていたのである。
第五百三話 完
2012・7・10
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