第五百二話
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第五百二話 華奈子とモーツァルト
華奈子は美奈子のフルートを借りてある曲を吹いていた。その曲は。
「上手ね」
「うん。モーツァルトだったわよね」
華奈子はその曲の楽譜を見ながら美奈子に尋ねた。
「ええと。トルコ行進曲」
「いい曲でしょ」
「ええ。本当はフルートで吹く曲じゃないみたいだけれど」
「それでもいい曲はのは確かよね」
「そうね。少し難しい感じだけれど」
専門ではないフルートでしかもはじめて吹く曲だからだ。実は華奈子には充分吹けるだけの技量はもう備わっている。
「いい感じね」
「モーツァルトの曲は誰もが好きになれるのよ」
美奈子はにこりと笑ってこう話す。
「天使の音楽って言われる位なの」
「そうね。あたしが聴いてもね」
「華奈子は基本ポップスとかロックよね」
「ええ。どちらかというとね」
そちら系だった。それにダンスだ。
「そういうのが好きよ」
「けれどクラシックも悪くないでしょ」
「モーツァルトを聴く限りね」
そうだとだ。華奈子も答える。
「いい感じね」
「モーツァルトの曲は他にもあるから」
「前に吹いた曲の他にも?」
「物凄い多作の人だったのよ」
その多作でも有名である。作曲していないと苦しくて仕方がないと言ったこともある。
「作曲する時間もすぐで」
「速筆だったのね」
「そうそう。もうあっという間に作曲して次の曲にかかるようなね」
「休みなしで?」
「そんな感じだったのよ」
「ううん。天才って言うけれど」
「努力しないっていうか。そもそもずっと作曲してるから」
努力以前にだ。それはだった。
「本人にとっては生活の一部だったのよ、作曲が」
「御飯を食べる感じ?」
「息をする感じかしら」
食事どころではなかったというのだ。モーツァルトにとっての作曲とは。
「そうした人だったから。最初から才能が桁外れだったにしても」
「そこまでのことができたのね」
「そうみたいね」
「何かあたしそれ聞いて結構自信なくすけれど」
「才能が違い過ぎて?」
「そんな桁外れの人がいたのね」
モーツァルトの音楽的才能の前に脱帽したのだ。だが美奈子はそんなことを言った双子の相方に対してこう言ったのである。
「モーツァルトはまた特別だから」
「気にしなくていいの?」
「そう。人間の歴史で多分ダントツの天才だからね」
音楽においてはそうだからだとだ。こう言って双子の相方をフォローしたのである。そしてそれはその通りだった。モーツァルトはあくまで特別なのだ。
第五百二話 完
2012・6・18
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