第五百話
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第五百話 すき焼き
華奈子と美奈子は晩御飯を食べていた。この日の夕食はというと。
「そうそう。寒い時はこれなのよ」
「すき焼きだっていうのね」
「あたしすき焼き大好きなのよ」
鍋一杯の肉や葱、豆腐に糸こんにゃく、それに麩やしめじを見ての言葉だった。
「やっぱりお肉よね」
「そうよね。私もすき焼き好きだし」
「美奈子もお肉好きよね」
「ええ、好きよ」
その通りだとだ。美奈子も答える。
「特にね」
「特にって?」
「じっくり煮たお肉がね」
「それが好きなの」
「ええ。けれど華奈子はお肉すぐに食べるわよね」
「好きだからね」
それでだとだ。華奈子は美奈子に即答で返した。
「煮えたらすぐに食べるわよ」
「だから。華奈子がいたらお肉すぐになくなるから」
「それでじっくりと煮たお肉はっていうの」
「そうよ。華奈子お箸の動き速いし」
「そう言う美奈子も速くない?」
「お箸が速くないとお鍋は食べられないから」
実は二人の家では鍋は結構良くする。意外と安上がりでしかも栄養のバランスがよく腹一杯食べられるからだ。すき焼きも然りなのだ。
「だからよ」
「つまりあたしと競争してるせいでっていうのね」
「そうよ。けれどね」
それでもだという美奈子だった。
「お肉が一杯あるのは確かにいいわよね」
「そうよね。昔はお肉ってもっと高かったんだっけ」
「そうみたいね」
美奈子は確実なものではないがこう華奈子に答えた。
「聞いた話だとね」
「お父さんとお母さんの小さい頃よね」
今二人の両親は丁度席を外していていない。玄関で配達を受け取っているのだ。
それで二人で話をしているのだ。その中でのやり取りだった。
「確か」
「その時はまだアメリカとかオーストラリアから牛肉を輸入してなかったから」
「それでなの」
「そう。まだ高かったと思うわ」
「国産のお肉の方が高いのね」
「その分そっちの方が美味しいらしいけれどね」
「けれど安くて食べられるのならね」
華奈子が選んだのはこちらだった。
「それでいいわ」
「そうね。私もよ」
「一杯食べられるからね」
華奈子は美奈子と笑顔で話してそのうえでだった。すき焼きの肉をこれでもかと食べる。二人にとっては満足のいく肉だった。
第五百話 完
2012・6・15
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