第四百九十八話
[8]前話 [2]次話
第四百九十八話 船
美奈子は笛のやり取りの後で楽譜を読んでいた。その楽譜は誰が作曲したものかということを双子の相方である華奈子に話した。
「ワーグナーだけれど」
「あのドイツの音楽家?」
「そう。その音楽家の楽譜だけれど」
「ふうん。どんな曲の楽譜なの?」
「さまよえるオランダ人よ」
このオペラの楽譜だというのだ。
「ワーグナーの初期の作品だけれど」
「何か物々しいタイトルね」
「そうでしょ。けれどね」
「けれど?」
「名作よ、この作品も」
「そんなにいいの」
「こんな感じだけれど」
美奈子は自分のフルートを出してそのうえでさまよえるオランダ人の曲を吹いてみせた。華奈子はそのフルートを聴いてこう言うのだった。
「ううん、この曲って」
「どう思うかしら」
「物々しいっていうか嵐みたいね」
そうした感じの音楽だというのだ。
「その中を船が進んでいるみたいな」
「そう思うのね」
「それで最後は」
美奈子はさまよえるオランダ人の序曲を最後まで吹いたのだ。華奈子もそこまで聴いたのである。そのうえでこう美奈子に言ったのである。
「そこから救われて天にあがるみたいな」
「そこまで感じたのね」
「ええ、そう思うけれど」
「そのままよ。一回聴いてそこまでわかったのね」
美奈子は微笑みになって華奈子に答えた。
「凄いじゃない」
「そのままだったの?」
「このオペラ二時間あるけれど」
「長いわね、二時間って」
「オペラだと普通よ。けれどね」
オペラ本編の話はまずは置いて話すのだった。
「このオペラは最後はハッピーエンドで海をさまようオランダ人が主人公だから」
「あたしがイメージした通りなの」
「そうよ。そのまま」
「ううん、正解だったのね」
「凄いじゃない。けれど船ね」
美奈子はここで考えてだ。こう華奈子に言った。
「魔法で船造られたら面白いわね」
「あっ、それ面白そうね」
華奈子は目を輝かせて美奈子のその話に乗った。
「魔法で造る船ね」
「そう。どうかしら」
「ちょっと考えてみない?」
華奈子は目を輝かせて美奈子に話す。これがまた物語のはじまりとなるのだった。
第四百九十八話 完
2012・6・6
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ