第四百九十六話
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第四百九十六話 二人の区分
華奈子と美奈子はお互いにサックスとフルートを吹き合う。その結果だった。
二人共お互いの笛も使えることがわかった。だが、だった。
ここで美奈子からだ。こう華奈子に言ってきたのだ。
「お互いに吹けることはわかったけれど」
「それっていいことよね」
「いいことはいいことよ」
だがそれでもだとだ。美奈子は難しい顔で華奈子に言ったのである。
「けれど。楽器の受け持ちがあるから」
「受け持ち?」
「私はフルート、華奈子はサックスよね」
クラウンの受け持ちだった。とどのつまりは。
「そうなってるわよね」
「ええ、それはね」
「お互いの楽器が使えても私達がそれぞれ一緒の楽器を使うのは」
「駄目なの?」
「そう。時々はいいけれど」
だがそれでもだというのだ。
「常になると」
「それはよくないと」
「例えば。歌だけれど」
二人はクラウンのヴォーカルでもある。美奈子はこのことから話した。
「私も華奈子もソプラノじゃない」
「そうそう。けれどソプラノでも幾つもあったわよね」
「そう。声域によって色々あるの」
一口にソプラノと言ってもだというのだ。だが、だった。
「私はリリコで華奈子はリリコ=レジェーロなの」
「少しずつでも違うのね」
「そういうこと。だからいいけれど」
「これが全く同じ楽器なら」
フルートにしてもサックスにしても二つずつならというのだ。
「個性が出ないから」
「言われてみれば。うちのグループって」
「そうでしょ?それぞれ違う楽器使ってるでしょ」
「そこに個性があるのね」
「そうなの。それぞれの楽器を使ってそれぞれの声域があるから」
不揃い、そこに個性があるというのだ。
「同じなら個性にはなりにくいからね」
「じゃあこれまで通りあたしはサックスで」
「私はフルートでいいと思うわ」
「そうなるのね。それじゃあね」
あらためてだ。華奈子は考える顔になって述べた。
「あたしもね。もっとサックス吹ける様になるから」
「これは負けてはいられないわね」
美奈子もその華奈子の言葉を聞いて言う。
「私のフルートも」
「それぞれの楽器でもそれでもなのね」
「そう。私達はライバルでもあるのよ」
こうは言ってもだ。美奈子の笑みは優しい。ライバルはライバルでもお互いを認め合っていて尚且つ信頼し合う、敵同士ではないライバルだった。
そのライバル関係をだ。確かめ合うこともした二人だった。
第四百九十六話 完
2012・5・28
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