第四百九十四話
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第四百九十四話 二人でフルートを
美奈子は華奈子にこんな提案をした。その提案はというと。
「二人で吹くの?」
「そう、フルートをね」
これが美奈子の提案だった。彼女はにこりと笑って双子の相方に提案したのだ。
だがそれを受けてだ。華奈子はまず首を捻った。そのうえでこう美奈子に尋ねた。
「それはいいけれど」
「何かあるの?」
「美奈子フルート幾つ持ってるの?」
華奈子が気になったのはそのことだった。二人で吹くからには二つ必要になる。フルートは二人で吹くものではなく一人で吹くものだからだ。
だからそのことを尋ねたのだ。だが美奈子はというと。
安心して、と顔に出した笑みでだ。こう華奈子に答えたのだった。
「持ってるわよ」
「あれっ、二つあったの」
「っていうか三つ持ってるから」
二つどころではなかった。三つだった。
「全然大丈夫よ」
「そうだったんだ。三つもあったんだ」
「華奈子だってサックス一個だけじゃないでしょ」
「先生に貰ったのよ」
「私も。それはね」
「ああ、それでなの。あたしもサックスは三つ持ってるわ」
サックスもフルートもそれなりの値段がする。楽器は時として職人に作られることもある値打ちのあるものだ。少なくとも安いものではない。
しかし今田先生はお金持ちだ。伊達に立派なお屋敷に住んでいる訳ではない。だからそうした高価な楽器も幾つか持っているのだ。そしてその楽器を華奈子達にくれたのである。
「実は三つ共ね」
「そういえば皆の楽器も元々は先生がくれたのだったわよね」
「ええ、それでだったわね」
「私は最初からフルートやってたからね」
それでコンクールにも何度も出場している。美奈子はそちらの世界では有名なのだ。無論クラウンのバンドの世界でも小学生ながらそうであるが。
だから彼女は最初からフルートを一本持っているのだ。そしてそれに加えてなのだ。
「それで。三本あるから」
「一本あたしに貸してくれるのね」
「そうよ。そうして吹いてみない?」
「面白いわね。それじゃあね」
こうして話は決まった。華奈子ももう一本サックスを出す。そうしてだ。
まずは二人でフルートを吹いてみる。するとだ。
はじめて二人で吹くというのにそこには絶妙の調和があった。それで一曲吹き終わってから美奈子は驚いた顔で華奈子にこう言うことになった。
「凄いじゃない、華奈子」
「そんなに?あたしが?」
「はじめてよね、二人で吹くの」
「だからフルート自体ばりばりの初心者だから」
「それでも完全に合ってたわよ」
こう華奈子に言うのである。
「二人で吹くのって難しいのよ、本当は」
「けれど。あたしできたけれど」
「それ完全に才能ね」
美奈
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