第四百九十三話
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第四百九十三話 観ていたら
四匹は完全に歌劇の方に集中していた。そのうえでだ。
タロはライゾウにこう囁くことになった。その囁く言葉は。
「どう思う?今の曲」
「ああ、今の二人で歌った曲だよな」
ライゾウもタロに応えて言う。
「それだよな」
「僕はかなりいいと思うけれど」
「おいらもだよ。曲自体がいいけれどさ」
「今歌ってる人達もね」
「見事って言うんだろうな」
ライゾウは何時しか言葉を選んでいた。今自分が聴いている歌への言葉がどういったものが一番相応しいか頭の中で考えてそのうえで言葉を選んだのだ。
それで出した言葉がこれだった。タロもその言葉を聞いて言った。
「そうだろうね。見事だよね」
「旦那もそう思うんだな」
「思うよ。やっぱり見事だよ」
タロは確かな声で答えた。
「あの人達も。そしてさっき歌った人達もね」
「何かこの舞台いい歌手ばかりだよな」
「そうですね。モーツァルトですから」
「自然とそうなるのでしょう」
ここでタミーノとフィガロが二匹に言ってきた。
「モーツァルトの音楽はまさに魔術です」
「そこにはただ美麗があるだけではありません」
モーツァルトの音楽、それ自体に秘密があるというのだ。今上演されているモーツァルトのオペラの。
「どれだけ難解な曲でも歌えるのです」
「そして上演できるのですから」
「モーツァルトならおいらも知ってるぜ」
ライゾウはタミーノとフィガロ、彼から見て左手にいる二匹に対して述べた。尚彼の右手にはタロがいる。四匹一列に並んでボックスから舞台を観ているのだ。その手すりから。
「あれだろ。天才って言われてたんだよな」
「はい、天才という言葉はモーツァルトの為にある」
「こうした言葉が当てはまる程の音楽家だったと言われています」
「天才だからかよ。例えどんなに難しい歌でも」
歌えて上演できるのかというのだ。そしてさらにだった。
ライゾウはその舞台の歌を聴きながら今度はタロに尋ねた。
「それで歌手とか演奏する人達までもな」
「うん、その実力を引き上げていってるのかもね」
「だとしたら本当にあれだよな」
「モーツァルトの音楽には魔術があるね」
ただ人を魅了するものだけではないというのだ。モーツァルトの音楽は。
「そうみたいだね」
「御主人達も魔法に音楽を入れてるけれどな」
六人がバンドを組んでからだ。そうなってきていることである。
「あれも大体同じなのかね」
「そうなるのかな」
二匹で華奈子達のことも話した。そうした話をしながらだ。
タミーノとフィガロを入れて四匹で舞台を観ていく。そうして。
最後の最後、カーテンコールまで楽しむのだった。四匹はそれぞれの前足で拍手
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