第四十九話
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第四十九話 何気なく戻って
小田切君が戻ってきた。ところがその戻って来たということにすら気付かないクラウンの面々であった。それも無理のないことではあった。
「あれ、小田切さん」
「今まで何処に」
「ああ、ちょっとね」
穏やかな笑みを浮かべて彼女達に応える。
「他のとこに行っていたんだ」
「観覧車ですか?」
華奈子が何も考えずに問うた。
「ひょっとして」
「まあね」
とりあえずこの場はこう答えることにした。
「結構面白かったよ。よかったらどうかな」
「面白いみたいよ」
華奈子はそれを聞いて皆に観覧車を勧めたのであった。
「どうかしら」
「そうね」
「いいかも」
皆もそれに頷く。これでおおよそのことは決まりであった。
「じゃあ行こうよ」
華奈子が言う。
「観覧車に」
「六人でいけるかな」
「大丈夫でしょ」
観覧車のところに向かいながら話をする。
「そこんところは」
「じゃあ六人ね」
「ええ」
こうして彼女達は六人で観覧車に乗った。後には小田切君と今田先生が残る形になった。ここでその今田先生が小田切君に声をかけるのであった。
「あのですね」
「はい」
小田切君はそれに応える。
「何でしょうか」
「宜しければ御一緒にどうですか」
にこりと笑ってそう声をかけてきたのだ。
「御一緒にとは?」
「ですから」
にこりとした笑みのまま観覧車のところを手で指し示すのであった。
「観覧車に」
「あのですね」
その誘いに少し顔を赤らめさせる小田切君であった。
「私、まだ独身ですし」
「私もです」
かなり答えになっていなかった。
「むしろどちらかが相手がおられた方が問題ではないでしょうか」
「まあそうですけれど」
言われてみればその通りである。この場合は先生が正しかった。
「では。どうぞ」
「わかりました。それでは」
二人も一緒に観覧車に乗ることになった。小田切君にとっては何か不思議な感触のする会合となるのであった。
第四十九話 完
2007・10・3
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