第四百八十八話
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第四百八十八話 気紛れで
博士は気紛れだ。それは今も同じだった。
人体実験に使う人間を捕まえる為に拉致用ロボットを出そうとしたところでだ。急に気が変わってこんなことを言い出したのである。
「殺戮用ロボットにしようかのう」
「そっちにされるんですか?」
「それを平壌に放つ」
そうするというのだ。
「核実験をしようとしておったな、あの国は」
「いつものことですね」
「どうせなら何処かに撃ち込むべきじゃ。それでじゃ」
「そんな小さいことを言うからですか」
「少し頭にきておった。あの国に送ろう」
「一体何体送るんですか?」
「百体程かのう」
博士は数多くの種類と数のロボットを持っている。それこそ世界に恐ろしい災厄をもたらすことができるレベルで所有している。
それでだ。その中からだというのだ。
「放ってそうしてじゃ」
「あの国の人間を抹殺するんですか」
「首が腕が胴が飛びじゃ」
殺戮用ロボットに斬られてである。
「次々に撃ち抜かれていくぞ」
「刃に銃ですか」
「それに毒ガスもある」
博士は毒ガスも好きだ。無論国際法でその製造も所持も使用も禁止されている。
「あの国は面白いことになるぞ」
「何かあの国が嫌いなんですね、博士は」
「だから小悪党は嫌いなのじゃ」
それでだというのだ。
「あの国の将軍様とやらはな。初代の頃からじゃが」
「まあ典型的な独裁者ですね」
「それも愚劣なというのがみそじゃ」
「ですね。よくもまあ三代続いてあんなのが出ますね」
「気に入らんから送ってやるわ」
殺戮ロボット百体をだというのだ。
「ではそうするぞ」
「まあ。あの国相手なら誰も文句は言わないですよ」
「小物は嫌いじゃ。容赦はせんぞ」38
「そこは一貫してますね」
「わしが一貫していなかったことがあるかのう」
博士は逆に小田切君に問い返した。
「ないと思うが」
「そういえばそうでしたっけ」
「うむ、わしは気紛れだが一貫しておるつもりじゃ」
生まれて二百億年の間ずっとだというのだ。
「だからじゃ。今回もじゃ」
「気まぐれで一貫して大量殺人ですね」
「それをするとしよう」
「じゃあそういうことで」
小田切君もこう言ってだ。博士を見ているだけだった。かくして平壌で再び一万単位の人命が無駄に消えたのだった。
第四百八十八話 完
2012・4・29
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