第四百八十一話
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第四百八十一話 舞台自体は
ライゾウ達は慎重に今日子先生を探す。しかしだった。
先生の姿は見えない。ましてやその相手もだ。ライゾウはロイヤルボックスのところから普通の観客席を見下ろしながらだ。こう言うのだった。
「やっぱりいないな」
「そうだね、いないね」
一緒に見ているタロも見つけられない。
「けれどこの歌劇場にいるんだよね」
「ああ、それは間違いないな」
「けれどいないね」
タロは見下ろしながらさらに言う。
「隠れてるのかな」
「いや、それはないな」
ライゾウは今日子先生が隠れている可能性は否定した。それはないというのだ。
「だってよ。おいら達が尾行してるって気付いてるとは思えないからな」
「そうだよね。まさかそんなことはないから」
二匹には自信があった。わざわざ姿を消してまで慎重に尾行したからだ。だからこそ気付かれているとはだ。まさかそれはないというのだ。
だがそれでも今日子先生は見つからない。ライゾウは目を凝らしながら探している。
「猫の目ってのは特別なんだよ」
「うん、猫は目だよね」
「犬は鼻でな。けれど旦那もわからないか?」
「香水が多過ぎて」
タロは匂いを嗅いだがそれでもだった。観客や歌手達の香水の香りがあまりにも多かったのだ。しかも香水の香りだけではなかったのだ。
「シャンプーやリンスや。あとファンデーションとかの化粧品の匂いも凄いね」
「何だよ、香水だけじゃないのかよ」
「歌劇場って着飾る場所だからね」
それでだ。色々な匂いが混ざっているというのだ。
「先生の香水やそのままの香りも」
「わかりにくいのかよ」
「わかりにくいね。しかもね」
「耳でもわからないよな」
「ちょっと以上にね」
猫の目でも犬の鼻でもそれぞれの耳でもだった。わからなかった。
それはタミーノとフィガロも同じでだ。彼等も言う。
「ここからならすぐにわかると思いましたが」
「そうはいかないみたいですね」
「これは一体どういうことでしょうか」
「尾行に気付かれたとは思えませんし」
彼等にしてもわからないことだった。しかもだ。
ここで開幕のベルが為った。それを受けてタミーノが仲間達に言う。
「開幕ですね。では」
「舞台観るのかよ」
「そうするのかな」
「はい、そうしましょう」
タミーノはライゾウとタロにも述べた。そしてフィガロもだ。
はじまったばかりの序曲を聴きながらだ。こう言うのだった。
「今日子先生の捜索は後にしましょう」
「そうか。じゃあ今はか」
「舞台を楽しもうか」
ライゾウとタロはフィガロの言葉にも応えた。そのうえでだ。
今日子先生の捜索を止めて舞台に専念することにした。その幕がゆっくりと上がろう
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