第四百七十八話
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第四百七十八話 モーツァルトではなく
美奈子が持っていたDVDはだ。何かというと。
「あれっ、モーツァルトじゃないの」
「タミーノとフィガロの名前の元になっているあれね」
「うん。そのモーツァルトじゃないの」
華奈子も二匹の名前の由来は知っていた。彼等の主である美奈子から聞いているのだ。それでここでもだ。こう美奈子に対して言ったのである。
「あの作曲家のじゃないの」
「今回はロッシーニしたの」
「ロッシーニ?」
「ロッシーニは知ってるかしら」
「ええと?確か」
ロッシーニと聞いてだ。華奈子は視線を上にやって考える顔で述べた。
「あれよね。音楽の授業で習った記憶が」
「ウィリアム=テルのね」
「ウィリアム何とかだったかしら」
勉強があまり得意ではない華奈子はこう答えた。
「その作品の人だったかしら」
「そうよ。そのね」
「そうよね。ウィリアム何とかよね」
「ウィリアム=テルよ。スイス独立の時を舞台にした作品よ」
「じゃあ今からはそれを聴くの?」
すぐにだ。こう考えた華奈子だった。
「そのウィリアム・・・・・・テルを」
「違うわ。また別の作品よ」
「そうなの。そのロッシーニって人ウィリアム・・・・・・テル以外の作品もあるの」
今一つはっきりと覚えられずだ。華奈子のウィリアム=テルについて言う言葉は今一つ歯切れがよくない。その証拠に言葉に間がある。
だがそれでもだ。こう言ったのである。
「というと今聴くのはどんな作品なの?」
「チェネレントラよ」
「チェネレントラ?」
「そう、シンデレラのことよ」
微笑んでだ。美奈子は華奈子にこう答えた。
「それは知ってるわよね」
「ええ。シンデレラならね」
知っているとだ。微笑んで答える華奈子だった。
「あたしも知ってるわ」
「それを今から聴きましょう。ただね」
「ただ?」
「カボチャの馬車やガラスの靴は出ないわよ」
シンデレラに必須のだ。そうしたものはだというのだ。
「そうしたものなしにね。シンデレラは幸せになるのよ」
「えっ、そうしたのがなくてどうして幸せになるのよ」
「それは観ればわかるわ」
まさにだ。そうすればだというのだ。
「だから今から一緒にね」
「観てどうなるかを、っていうのね」
「そうよ、確めて」
「わかったわ。それじゃあね」
華奈子は笑顔で応えてだ。そうしてだった。
二人でそのチェネレントラ、ロッシーニのオペラを観るのだった。それをはじめたのである。
第四百七十八話 完
2012・3・28
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