第四百七十六話
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第四百七十六話 タロの鼻
くんくんと歌劇場のロビー、やはり見事なその内装の中を嗅ぎながらだ。そのうえでだ。タロは歌劇場のロビーの中を進んでいく。そのうえでだった。
彼はだ。自分の後ろにいるライゾウ達に対して言った。
「わかったよ」
「ああ、わかったのか」
「うん。香水の匂いでね」
そこからわかったというのだ。
「今日子先生の香水は薔薇の香水だったからね」
「そんなことまでわかったのかよ」
「うん、犬だからね」
まさにだ。犬だからこそだった。そうしたことがわかるのもだ。
「それもわかるよ」
「凄いな。そこまでわかるのかよ」
「犬だからね」
また犬故にだと答えるタロだった。
「そういうこともわかるんだ。それにしても」
「それにしても?どうしたんだよ」
「いや、いい香水だね」
先生が使っているその薔薇の香水はだ。いいものだというのだ。
「それもとてもね」
「そんなにいい香水なのかよ」
「シャネルだね」
あのココ=シャネルのブランドものだというのだ。その香水はだ。
「それもその中でね」
「かなりいいものかよ」
「先生趣味がいいのは服だけじゃないんだ」
服の趣味だけではないというのだ。先生の趣味がいいのは。
「香水もだね。それに石鹸もいいね」
「おいおい。そこまでわかるのかよ」
「だから犬だから」
犬の鼻はそれでわかるというのだ。
「今日子先生が使っている石鹸のこともね」
「本当に何でもわかるんだな」
「わかるよ。じゃあ」
「ああ、それじゃあ今日子先生は何処にいるんだよ」
「もう劇場の中にいるよ」
既にだ。そこに移動したというのだ。
「ロビーは留まらなかったね」
「早いですね」
「もうですか」
「人を待った形跡はないね」
匂いで動きもわかったのだ。やはり犬の鼻は凄い。
「そのまま行ったね」
「人はロビーで待つものですが」
「そうされないということは」
タミーノとフィガロはこのことから考えた。先生の動向について。
そしてそのうえでだ。こう言ったのである。
「いえ、客席の中で待ち合わせをすることも有り得ますね」
「席を予約しているのなら」
こうタロとライゾウに話した。そうして場所を変えた。その場所とは。
第四百七十六話 完
2012・3・20
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