第四百七十五話
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第四百七十五話 入り口
今日子先生はその前に来た。まさに宮殿を思わせる白い外装の歌劇場の前にだ。
その入り口を見てだ。タロは物陰からこう言った。
「凄いね」
「だよなあ。何だよあの宮殿」
ライゾウもだ。歌劇場のその入り口を見て言った。
「王様でも住むのかよ」
「ですからあれがです」
「ウィーン国立歌劇場の入り口です」
タミーノとフィガロが驚く二匹に答える。彼等はまだ姿を消しているがそれでも影が出てしまうことを懸念して物陰に隠れているのだ。ここでもそうしているのだ。
そしてその物陰から歌劇場の入り口を見ているのだ。その中でだ。
タロがだ。また言ったのである。
「白くて円柱で支えられていて」
「そうですね。それがですね」
「宮殿に思えますね」
「中も凄いんだろうね」
入り口からだ。タロはこのことも察したのだ。
「やっぱりね」
「はい、ウィーン国立歌劇場通りならです」
「そうなります」
またタミーノとフィガロが説明してきた。
「見事なのは入り口だけではないでしょう」
「先程もお話しましたが」
「そうだね。それじゃあね」
「中に入るか」
こう話してだった。タロとライゾウが先に出た。そしてだ。
タミーノとフィガロも続く。四匹は素早く入り口まで駆けた。そうしてだ。
すぐに入り口の中まで入った。そこから中に入ろうとする。しかし。
ここでだ。ライゾウがこんなことを言った。今は日差しの下にいないので影は出ない。それで彼は透明になっていることを利用しておおっぴらに動きながら言ったのである。
「あのさ。それでな」
「それでって?」
「今日子先生何処だろうな」
ライゾウが言ったのはその尾行相手のことだった。
「今何処にいるんだろうな」
「そのことなら任せて」
しかしだった。ライゾウのその懸念はすぐに消えたのだった。
「全然大丈夫だから」
「ああ、鼻か」
「そう。犬だからね」
言うまでもなくタロは犬である。犬ならばだ。
「犬は鼻が命だからね」
「だよな。じゃあここは旦那か」
「任せてね。しっかりとね」
「そうさせてもらうぜ。旦那にな」
「今日子先生の匂いはもう覚えてるから」
ここでも犬だった。犬の面目躍如だった。
こう話してだ。タロは。
その犬の象徴でもある鼻を効かせはじめた。そしてそのうえで今日子先生を探す。くんくんと鼻を動かしながら進むタロに続いてだ。ライゾウ達も進むのだった。
第四百七十五話 完
2012・3・20
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