第四百七十四話
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第四百七十四話 歌劇場
今日子先生が向かっていると思われる八条歌劇場についてだ。タミーノがライゾウとタロに話す。
「あの歌劇場は凄いのです」
「凄いって何がだよ」
「どう凄いのかな」
「外装やロビーはウィーン国立歌劇場を参考にしていまして」
「ウィーン?あのオーストリアの首都かよ」
「はい、あの音楽の都です」
説明はここからだった。
「あの町にある歌劇場でして」
「音楽の都かよ。そんなところにあったらやっぱり」
「まさに世界屈指の歌劇場です」
それがウィーン王立歌劇場だというのだ。
「素晴らしい歌劇場です。私は中に入ったことはありませんが」
「凄いな。そんなところをモデルにしてるのかよ」
「しかもです」
さらにだというのだ。
「それに加えてです」
「まだあるのかよ」
「八条歌劇場はウィーン国立歌劇場より大きいのです」
「その歌劇場よりもかよ」
「それでいて設備や装飾は充実し尚且つ音の響きもいいとのことです」
歌劇場は音の響き等が極めて重要になる。何しろ歌を聴かせる場所である。それが考慮されていなければどうしようもないのである。
そしてそれもだ。その歌劇場はいいというのだ。
「ですから。八条歌劇場は世界的にはあまり有名ではありませんが」
「いいんだな」
「左様です」
タミーノが話すそのことを聞いてだ。タロはフィガロに尋ねた。
「そういえば君達の名前って」
「御主人様がつけて下さいました」
美奈子が名付け親なのだ。彼等の主である。
「それぞれ歌劇の登場人物の名前です」
「そうらしいね」
「私もタミーノもモーツァルトからです」
彼の歌劇から取られた名前だというのだ。
「私はフィガロの結婚、タミーノは魔笛です」
「ああ、美奈子さんって笛を使うし」
「それもありまして。私達の名前が決まったのです」
フィガロは少し嬉しそうな感じでタロに話す。
「いい名前だと。私達は気に入っています」
「そうだったんだ。実は僕達もご主人につけてもらったけれどね」
これはタロとライゾウも同じだった。
「まあ何となく名付けたらしいけれど。それでもね」
「いい名前ですね。タロさんもライゾウさんも」
「自分でもそう思ってるよ」
タロは嬉しそうにライゾウに返した。
「いい名前だってね」
「自分の名前を誇れることはお互いいいことです」
フィガロは笑いがある声でタロに答えた。その笑みには決して悪意はない。むしろその逆で友人への温かみ、それがある笑みの声だった。
第四百七十四話 完
2012・3・17
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