第四百七十三話
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第四百七十三話 尾行継続中
ライゾウは姿を消したその中でだ。同じく姿を消しているタロに対して言った。
「あのさ、旦那」
「何かな」
「いや、今日子先生本当に何処に行くんだろうな」
タロに言うのはこのことだった。
「それが気になるんだけれどな」
「そうだね。ただひたすら歩いてるけれど」
「一体何処に向かってるんだ?」
ライゾウは首を捻る。しかし姿を消しているのでそれは見えない。
「この道って何処に続いてるんだろうな」
「駅、違いますね」
「そこではないですね」
タミーノもフィガロもそこではないとした。
そしてすぐにだ。彼等はこう話したのである。
「スポーツジムでしょうか」
「いや、そこではないです」
「そうですね。ここからは」
「歌劇場に行けます」
八条町には歌劇場、即ちオペラハウスもあるのだ。八条グループが神戸市、八条町のあるそこに築いた歌劇場だ。勿論八条グループが経営している。
その八条歌劇場に向かうとわかってだ。またライゾウが言った。
「おいら歌劇場行ったことないんだよな」
「ああ、ライゾウってクラシックは」
「興味がないっていうかな」
首を捻ってもだ。やはり姿が見えないのでそれは誰にも見えない。影も隠れている。
だがそれでもだ。ライゾウはこう言うのだった。
「縁がないからな」
「そうだよね。ライゾウの好きな音楽って」
「ポップスだよ」
それだとだ。ライゾウはタロに話した。
「それが好きだけれどな」
「だから歌劇場は」
「ああ、傍に近寄ったこともないぜ」
まずそれがないというのだ。
「だからこの道もな」
「知らないんだね」
「行ったことなかったんだよ」
そもそもだ。最初からだというのだ。
「本当にな。けれどこの道ってな」
「うん。僕もはじめて通るけれど」
実はそれはタロもだった。その道を見回す。姿を消したまま。
「いい道だよね」
「整備されて木も並んでて」
「下の道がね」
そこは白かった。しかも奇麗なアラベスク模様だ。
そしてその道を見てだ。ライゾウも話した。
「おいら、こういう道好きだぜ」
「じゃあ尾行も今は」
「余計に楽しくなってきたぜ」
こうタロに言ってだ。さらに尾行を続けるのだった。
第四百七十三話 完
2012・3・18
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