第四百四十五話
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第四百四十五話 博士の気まぐれ
博士の北のならず者国家への攻撃は続いていた。
それによりだ。実に多くの犠牲者が出ていた。特に軍のだ。
今もその殺戮の有様がテレビで実況中継されている。それを見ながらだ。当の殺戮を行っている博士はだ。満足した面持ちで言うのだった。
「よいのう。ワインが美味いわ」
「殺戮を見ながら飲むワインって美味しいんですか」
「こんな美味いものはない」
こうだ。赤ワインをチーズと一緒に楽しみながら小田切君に言うのである。
「どうじゃ。小田切君も飲むか?」
「いえ、僕はまだ」
いいとだ。小田切君は博士の申し出を断る。
「お昼ですから」
「だから飲まんのか」
「お酒は夜に飲む主義ですから」
「イタリア人やフランス人は朝から飲むぞ」
博士は欧州の基準で話す。
「無論スペイン人もじゃ」
「そんなこと日本人がしたらアルコール中毒になりますよ」
「日本人は酒が弱いのう」
「体質ですから。仕方ないですよ」
「二百億年生きていれば酒もどうということはない」
そもそも人間かどうかすら怪しい博士だった。少なくともビッグバンと同時に宇宙に出て来たから地球人でないことは間違いない。
「実に美味じゃ。幾ら飲んでも平気じゃ」
「何か羨ましいですね」
「とりあえず小田切君は夜じゃな」
「はい、よかったら頂きます」
「二本用意しておくからな」
実は勤めている人間のへの福祉厚生はしっかりしている研究所なのだ。とはいっても勤めている人間は小田切君だけである。
「存分に楽しんでくれ」
「わかりました。じゃあ夜に」
「さて。それでじゃ」
ここでだ。また言う博士だった。
「かなり死んだな」
「地震や津波より沢山死んでますよ」
「そうじゃな。では今回はこれでよい」
こう言ってだった。博士は。
急にだ。リモコンを操作してだ。ロボットを引き揚げさせた。
そのうえでだ。ロケットの発射も終えてだった。小田切君に話した。
「終わるとしようぞ」
「あれっ、あっさりとですか」
「わしに未練という文字はない」
こう言ってだ。本当にロボットを引き揚げさせたのだ。
ロボットがならず者国家から去るのを見届けてだ。小田切君は言う。
「で、今度は何をするんですか?」
「気が向いたらな。また何かするわ」
「それで今は」
「うむ、これでよい」
こうしてだ。あっさりと話を終わらせてだ。博士はまたワインを飲むのだった。どちらにしても飲むのであった。
第四百四十五話 完
2011・12・7
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