第四百四十三話
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第四百四十三話 国が壊れる
そのロボットの乱入によりだ。将軍様の国は。
町を破壊されそのうえでだ。大量虐殺を受けていた。その有様はテレビでも実況中継されている。
その中継をテレビで観ながらだ。小田切君は博士に尋ねた。
「これでいいんですね」
「愉快じゃな」
「愉快なんですか」
「まことに愉快じゃ」
ワインをグラスで優雅に飲みつつだ。答える博士だった。
「実によい。しかしじゃ」
「しかし?」
「何かが足りんのう」
破壊と殺戮を見てもだ。物足りないというのだ。
そしてそれは何故かもだ。話す博士だった。
「やはりあれじゃな。毒ガスじゃな」
「毒ガスですか」
「毒ガスは殺戮の花じゃ」
碌でもないことをまた言うのだった。尚博士は毒ガスも大好きである。しかも相手が苦しみ抜く、時間をかけてそうなるものが好きなのだ。
その嗜好の博士がだ。小田切君に言うのである。
「それがなかったわ」
「じゃああの国に今からですか」
「うむ、毒ガスを撃ち込む」
今度はそれをするというのだ。
「そうするのじゃ」
「これだけ壊して殺してさらにですか」
小田切君は博士の碌でもない欲にかなり呆れた。
しかしだ。博士はそれに構わずだ。
ここでだ。さらに言うのだった。
「今から毒ガス入りのミサイルを撃ち込むからのう。見ておれ」
「スカッドミサイルですか?」
かつてイラクに使ったそれではないかというのだ。
「それでしょうか」
「あんなちゃちなものは使わん。わしが開発した独自のミサイルじゃ」
「それを撃つんですね」
「そういうことじゃ。それではじゃ」
こうしてだった。今度は毒ガス入りのミサイルが撃ち込まれるのだった。
それによってだ。一気にだった。将軍様の国の人民達がだ。
もがき苦しみながら死んでいく。とはいってもだ。
あの異様な軍服の者達だけが死んでいる。人民には撃ち込まれていない。
それも実況中継で見てだ。小田切君は博士に尋ねた。
「これが見たかったんですか」
「うむ。あの軍人共は嫌いじゃ」
その国の人民軍の将兵達をだ。博士は嫌いだというのだ。
それでだ。彼等が死ぬのを見て話すのである。
「あの不恰好な軍服と行進は鼻持ちならん」
「それがお嫌いな理由ですか」46
「そうじゃ。大嫌いじゃ」
「何か。理由としては」
大量殺戮を繰り返すにはだ。どうかというのだ。だが小田切君のその言葉をよそにだ。博士は毒ガス入りのミサイルを撃ち込み続けるのだった。
第四百四十三話 完
2011・11・30
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