第四百二十三話
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第四百二十三話 美樹の胸
美樹もだ。華奈子の話を聞いて。
難しい顔になりだ。弟に尋ねた。
「あんたは胸はどうかしら」
「胸って?」
「そう、女の子の胸ね」
まだ小さい弟に真剣な顔で尋ねている。
「大きい方がいいかしら。それとも小さい方がいいかしら」
「お母さんの胸がいい」
これが弟の返事だった。明るい声で姉に言う。
「お母さんのが」
「お母さんの胸がいいの?」
「そう、僕お母さん大好きだから」
小さい子らしくだ。彼は無邪気な笑顔で答える。
「だからお母さんの胸がいい」
「お母さんのね」
美樹は弟の言葉を聞いてだ。考えた。
そしてだ。今度はだ。
母のところに行き実際にその胸を見る。母の胸はそれ程大きくない。とはいっても小さくもない。はっきり言えば普通の大きさである。
その胸を見てだ。美樹は言うのだった。
「普通なんだ」
「普通って?」
「お母さんの胸はね」
それがだ。普通だというのだ。
「大きくもないし小さくもないし」
「褒め言葉にもけなし言葉にも聞こえないわね」
「ありのまま言ってるだけだから」
美樹にしてもどちらを言っているつもりもない。事実を言っただけだ。
「だからね」
「成程ね。けれどね」
「けれど?」
「お母さんだって大きい時があったのよ」
にこりと笑ってだ。母は美樹に話すのである。
「ちゃんとそういう時があったのよ」
「そうだったの」
「そうよ。それは何時かわかるかしら」
「ええと」
そう言われてもだ。美樹は。
わからなかった。それでこう母に答えた。
「御免、わからないわ」
「じゃあ教えて欲しいかしら」
「御願い」
母に対してもあっさりした態度である。それでもだ。
本心からだ。母に頼んだのだった。それを受けて母もだ。
「わかったわ。じゃあね」
「教えてくれるの?」
「ええ。自分の子供に御願いされたら教えるのは親の仕事だから」
それでだと答えてだ。母は娘に話しはじめた。
美樹もその話を真面目な顔で聞く。それは美樹にとってはまだ先の話である。しかしそれでもだ。その話を静かに聞いていくのだった。
第四百二十三話 完
2011・9・20
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