第三百五十七話
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第三百五十七話 今すぐには
華奈子も美奈子もトレーニングと共に牛乳をこれでもかと飲んでいく。そうして飲みながら二人でこんなことを話すのだった。
「ねえ。そろそろかな」
「大きくなるかって?」
「うん。なるかな」
華奈子が美奈子に言っていた。
「そろそろ。胸が」
「いや、それはないわよ」
ところがだ。美奈子は双子の相方の言葉を打ち消してしまった。そのうえでこう華奈子に告げた。
「だって。幾ら飲んでもすぐにはね」
「大きくならないの」
「だから。体力つけるのと同じじゃない」
それとだというのである。
「徐々になのよ」
「ううん、牛乳もなの」
「牛乳飲んですぐに大きくなったら」
今回は美奈子が華奈子に話していた。この双子の大抵のパターンになっている。
「それこそ。皆ね」
「胸が大きくなってるわよね」
「そうよ。だからそれはないわよ」
こう華奈子に話すのだった。
「やっぱりね」
「そうね。考えてみたらね」
そして華奈子もだった。美奈子の話に納得するのだった。
「そんなすぐになる筈ないわよね」
「ゆっくりとだからね」
美奈子は微笑んでいた。そのうえでの言葉だった。
「こういうのもね」
「そうね。ただ」
「ただ?」
「若しかしたらだけれど」
次第に曇った顔になってであった。華奈子は美奈子に話すのだった。その話すこととは。
「幾ら飲んでも。それでもね」
「胸が大きくならないかもっていうのね」
「そうよ。その可能性もあるわよね」
こう美奈子に話すのだった。若し牛乳を飲んでもそれでも胸が大きくならなければ、というのである。将来への不安というものだった。
「あるわよね、それも」
「ええ、あるわ」38
それはあるとだ。はっきりと認める美奈子だった。
「否定できないわね、それは」
「ううん、若しそうなったらどうしよう」
「背だって伸びるとは限らないしね」
「そうそう」
背もであった。やはり牛乳を飲んでもだ。必ず大きくなったり高くなったりするとは限らないのだ。人それぞれということなのである。
「そうなったら。嫌よね」
「それでもね」
しかしだった。美奈子は華奈子にこう言った。
「いいことがあるじゃない」
「いいことって?」
華奈子は美奈子の今の言葉に顔を向けた。そうしてまた話をするのだった。
第三百五十七話 完
2011・1・31
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