第三百五十話
[8]前話 [2]次話
第三百五十話 小田切君の新しい趣味
「あれっ、何だよそれ」
「トランプかな」
「そうだよ」
小田切君はテーブルに座ってトランプを切っていた。そうしながらライゾウとタロの問いに応えたのである。応えながらも手を動かしている。
「そのトランプだよ」
「何だ?ポーカーするのかよ」
「それなら一緒にしない?」
「ああ、そういうのじゃなくてね」
ポーカーではないというのである。
「ちょっと占ってみるんだ」
「トランプ占いかよ」
「それなんだ」
「最近凝ってるんだ」
今度はこんなことを言う小田切君だった。
「それで今もやってるんだけれどね」
「ふうん、占いにねえ」
「ちょっと意外だね」
「科学者に占いは合わないかな」
不意にこんなことを言う小田切君だった。
「やっぱり」
「そんなことは言わないけれどな」
「別にね」
ライゾウもタロもそれはないというのだった。ライゾウは毛づくろいをしていて自然と中年男性の如き座り方になっている。タロは丸くなっている。
「ただ。占いねえ」
「小田切君が」
「それがピンとこないんだね」
「そうなんだよなあ」
「ちょっとねえ」
これが二匹の主張であった。
「博士だったら怪しい占い一杯知ってるけれどね」
「あの人は特別だから」
「占いも科学だからね」
そしてだった。小田切君はこう言ったのだった。
「だからね。これも勉強のうちかな」
「科学なのかい?占いって」
「そうなるんだ」
「そうした意見もあるよ。まあ科学にも限界があるし」
小田切君はカードを並べながらこんなことも言う。
「今のその知識だけでしかわからないから」
「そういうものだけれどな、結局は」
「科学でも魔術でも何でもね」
「まああれだよ。占いも科学っていうのは」
またこの言葉を口にしてだった。
「名言だね。何でも科学であり魔術なんだろうね」
「区別するのもってことだよな」
「そうなるね」
二匹は小田切君の言葉をそう捉えた。そうしてそのうえで彼のその占いを見守るのだった。彼は占いもはじめたのであった。確かに意外なことに。
第三百五十話 完
2011・1・3
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ