第三百二十二話
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第三百二十二話 華奈子の頭
その華奈子の成績である。美奈子は言うのだった。
「華奈子ってね」
「うん」
「いつも一夜漬けとかヤマカンよね」
「それが駄目なの?」
「それじゃあ本当の成績にはならないわよ」
そうだというのである。こうしたことへの指摘は双子ならではである。他の誰が言うよりも説得力のあるものであった。それもかなりだ。
「一夜漬けっていっても」
「うん」
「二時間かそれだけやって終わりじゃない」
「ううん、あたし勉強嫌いだし」
「それだけでもいつも六十点は取ってるんだから」
極端に頭が悪いかというとそこまではいかないのだった。
「だから。真面目にやったら」
「成績よくなるって言うのね」
「なるわよ。むしろね」
「むしろ?」
「真面目にやったらよ」
この前提を強調して話す美奈子だった。
「私より成績上になるわよ」
「まさか、そんな」
華奈子はそれは否定しようとした。美奈子の成績は魔女達の間だけでなく学年でも女の子ではトップの春奈の次に来るのだ。音楽と勉強の優等生なのだ。
「それはないわよ」
「あるわよ。私だってね」
「美奈子も?」
「一生懸命やったら。多分」
「そうね。運動音痴なおるわね」
華奈子は頬を赤らめさせて恥ずかしそうになった双子のかわりに話した。
「筋はよくなってるから」
「けれど。何か」
「運動好きじゃないのよね」
「ええ」
そうだと。赤くなった顔でこくりと頷いて答えた。
「そういうことを考えたら」
「あたし達って一緒なのね」
「そういうことだから」
「成程ね」
ここでわかった華奈子だった。
「つまり努力が大事ってことなのね」
「そうね。しかもそれって」
「あたしも美奈子も」
二人共だというのだった。
「同じってことよね」
「そうなるわね」
「ううん、けれど」
しかしであった。ここでまた難しい顔になる華奈子だった。そしてそのうえでこう言うのだった。
「あたしやっぱりお勉強はね」
これが華奈子の結論だった。どうしても勉強は駄目なのだった。
第三百二十二話 完
2010・9・28
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