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木の葉芽吹きて大樹為す
青葉時代・逝去編
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っけ。

「お前の目、オレは結構好きだったんだぞ。綺麗だなってずっと思ってた」

 内に秘めた意思の激しさを物語る様な、炎を映した様な赤い瞳。
 彼らの黒い髪とその瞳の色が交われば、まるで暗く陰鬱な夜を破る太陽の力強さを連想させた。
 ――今だからこそ、言える事だ。

「世界平和……ちょっと無理だったみたいだ。残念だなぁ……」

 でも、大丈夫だ。
 ヒルゼン君かダンゾウ君か、それとも扉間かミトか。
 私が見ることのない、遠い未来に生まれてくる子供達の誰かかもしれない。

「オレの、私の残した遺志を受け継いでくれる者は……出て来るさ。その時こそ、世界は平和へと導かれるんだろうなぁ……」

 私はその礎だ。
 余命宣告を受けて後、里の人々と触れ合う事でそう思えるようになった。

 でもやっぱり、ちょっと残念だなぁ。
 自分の歩いてきた道に後悔なんてしないけど、もうちょっと長生きしてみたかった。

 段々と意識が闇に包まれていく。
 闇でも、冷たく凍えた感じはしない――まるで母の腕に抱かれている様な、そんな安心感さえ覚える闇だ。

 体の感覚が徐々に薄れていく中、そっと頬に何かが触れる。
 今にも壊れてしまいそうな物を触れる様に優しく、傷つけない様に慎重に――それは震えていた。

 唇が弧を描く。
 なんでか、とても心が温かかった。

「……さよなら、だな」

 脳裏に巡るのは大事な弟妹と愛しい里の人々の姿。
 今まで関わって来た人達全員に心の中で別れを告げれば、瞼の奥の優しい闇が私を招き寄せてくれる。
 その心地よさに、肩の力を抜く。

 ――――最後に、誰かが何かを呟いている様な……そんな声が聞こえた。
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