第三百一話
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第三百一話 落ち着いた時間
先生達ののどかな時間は続く。本当に至ってのどかである。
「皆さん、今日のお茶は如何ですか?」
「ハーブティーは」
「はい、美味しいです」
「お菓子も」
華奈子達は一応そのお茶やお菓子を飲んで食べてはいる。しかしであった。
それでもその顔はだ。晴れていないどころか今にでも飛び出そうな顔であった。
「けれどいいんですか?」
「そうですよ」
六人はその顔で先生達に問う。
「博士がまた大騒動起こしてるんですけれど」
「そっちはいいんですか?」
「はい、今はこうしていいですよ」
「安心して下さい」
先生達はにこやかな顔で返すばかりだった。そのお茶をお代わりしてお菓子を手に摘んでだ。そのうえで食べていくのであった。
「是非共です」
「リラックスも大事ですよ」
「そうなんですか?」
だが華奈子はそれを聞いても首を傾げさせて言葉を返す。
「あの、生首に首のない身体が日本中飛び回り動き回ってますけれど」
「本当に何もしなくていいんですか」
「安心して下さい」
「その通りです」
あくまでこう言うだけの今田先生と今日子先生であった。
「落ち着いてお茶を飲んで」
「そしてお菓子を食べて」
「こうしていること自体に何かあるんですか?」
美奈子も今回は落ち着いてはいられない。それでこう問うのだった。
「若しかして」
「お茶を楽しみます」
「それとお菓子を」
先生達の優雅な微笑みと共に来た返答である。
「それですが」
「他に何か必要ですか?」
「いえ、別に」
こう言われてはだった。さしもの美奈子も言葉を止めてしまった。
そのうえでだ。諦めた様な感じで自分のティーカップにお茶を注いで飲むのだった。
「ちょっと美奈子」
「何か言えっていうの?」
「そうよ」
華奈子が怪訝な顔で美奈子に言ってきていた。
「言わないの?それで終わり?」
「ちょっとね」
美奈子はもう完全に諦めた顔である。
「それはかなり」
「無理になったのね」
「ここはなるようにしかならないかも」
美奈子らしくない言葉だった。
「やっぱりね」
「そうなのね」
そう言われてだった。華奈子は溜息をつく。彼女も言う言葉をなくそうとしていた。
第三百一話 完
2010・6・29
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