第三百話
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第三百話 機械のシェフ
小田切君は博士に博士自身の食事はどうするかと尋ねた。
これは何でもない問いだった。しかしである。
博士はその問いを聞いてだ。不意に不敵な笑みを浮かべてだ。こう言ってきたのである。
「それじゃがな」
「僕が作りましょうか?」
「いや、今回はそれはいい」
こう言うのだった。
「それはじゃ」
「あれっ、じゃあ出前ですか?」
「ここまで出前で来る店があるのか?」
「ないですけれどね」
博士の研究所の周りは立ち入り禁止区域である。これも全て博士がいるからである。それ以外に理由は一切不要ですらあった。
「そんなのは」
「そうじゃろう。もっとも出前も不要じゃ」
「それもですか」
「うむ、不要じゃ」
博士ははっきりと言い切ってみせた。
「じゃからそういうことではなくじゃ」
「それじゃあどうやって食べるんですか?」
「料理用のロボットを造ったのじゃよ」
こう言うのであった。
「実はのう」
「料理ができるロボットですか」
「それじゃ。それに今パエリアやガスパチョを作らせておる」
「へえ、スペイン料理もできるんですね」
「当然他の料理もな。じゃから小田切君は何もしなくてよい」
そうだというのである。
「そういうことじゃ」
「じゃあ僕はいるだけですか」
「部屋等の掃除は掃除用ロボットがやってくれるしのう」
「はい、じゃあタロやライゾウ達の御飯は忘れませんから」
「気が向いたら自分のアパートにも返っていいからのう」
それもいいというのだ。
「夜にはな」
「まあ時々そうさせてもらってますけれど」
それはしていた。小田切君にとって家とはそこだからだ。
「最近こっちにいる方が多いですけれどね」
「そうじゃな。全くな」
「まあそれは置いておいて。留守番はさせてもらいますので」
「頼んだぞ」
「はい、わかりました」
こうして小田切君は研究所の普通の部屋に戻ってだ。そうしてだった。
まずはタロ、ライゾウと共にだ。トレーニングルームで汗をかいた。この時にタロの散歩も兼ねている。犬には散歩はつきものである。
それからサウナと風呂で身体を綺麗にして一人と二匹で酒と夕食を楽しむ。そしてこの時にふと言葉を漏らすのだった。
「これで博士の危険な研究は発明がなかったらな」
「まあ天国だよな」
「そうだね」
「全くだよ」
そんなこともぼやいたりする彼等だった。しかし給料はもらっていて御飯も貰っているのでそこの文句は面と向かっては言えないのだった。
第三百話 完
2010・6・23
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