第二百九十話
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第二百九十話 首を見て
「う、うわああああーーーーーーっ!!」
「く、首がーーーーーーーーっ!!」
「身体がーーーーーーーーーーっ!!」
日本中阿鼻叫喚であった。
それも当然だった。生首の団体が空を飛び首のない人間の身体が団体で徘徊する。それは昼も夜も日本中で蠢いて回っているのである。
これで驚かない者はいなかった。そう、誰一人としてだ。
しかしその元はすぐにわかった。最早これは常識のレベルだった。
「また博士か」
「天本博士か」
「またやらかしたんだな」
それぞれこう言う。これはすぐにわかることだった。
「あの博士か」
「また騒動を起こすんだな」
「全く」
こうそれぞれ言う。だがそう言ってもどうしていいかはわからないのだった。
「しかしな」
「そうよね」
「あの博士を止めるなんてな」
「普通の方法じゃ無理だし」
そもそも普通の人間ではない。もっと言えば博士が人間であるという保証も誰にもできないものだった。何しろIQ二十万で二百億歳である。
「自衛隊も頭が痛いだろうな」
「そうよね」
「また、だし」
その自衛隊もだ。今必死に対処に追われていた。
「首は捕まえろ!」
「身体は拘束しろ!」
陸海空の三つの自衛隊がそれぞれ果敢に動いてであった。
生首は捕らえて身体は拘束してだ。それぞれ対処していた。しかしである。
「何か数が減らないな」
「ああ」
「ひょっとしてこれは」
「その通り!」
自衛官達の前にだ。ビルの屋上からそのマントをたなびかせてだ。博士が登場してきた。その姿は妙に格好いいものすらあった。
「自衛官の諸君!」
「犯人の登場か」
「相変わらず迷惑だよな」
「全く」
こう言ってであった。博士を見上げてそのうえで応えている。
博士はだ。胸を反らせて言うのであった。
「この生首と身体にはクローン技術を使っている」
「ああ、それで数が多いんだな」
「やっぱりそうか」
「本当に迷惑な技術だけ持ってるな」
「数はこれからどんどん増える」
自衛官の仕事を無駄に増やす発言だった。
「さあ諸君、それを受けるがいい」
「仕事はこれだけじゃないんだけれどな」
「人の迷惑を考える相手じゃないのはわかってるにしても」
「いい加減にして欲しいな」
「全くだよ」
文句を言う自衛官達だった。そうしてだ。
三日後には生首の数は百万を超えていた。身体の数もだ。それぞれ日本中を徘徊してだ。パニック状態にしてしまっていたのであった。
第二百九十話 完
2010・5・17
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