第二十九話
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第二十九話 戦い終わって
戦いが終わって六人は去って行った。しかし博士はそうはいかなかった。
「さあ博士」
小田切君は必死に博士を連れて行こうとする。しかし酔っている博士の耳には届かない。もっともこの博士は人の忠告なぞは最初から入らない耳を持っているのだが。
「帰りましょう」
「待て、小田切君」
その小田切君に言う。
「わしは閃いたのだ」
「何をですか?」
「名付けてチタデレ作戦だ!!」
「ドイツ軍の作戦ですか?」
第二次世界大戦中にドイツ軍がソ連軍への攻勢として計画した作戦である。これが有名なクルスク大戦車戦へとなっていくのである。
「それって」
「違うな、大規模な実験だ」
「実験に作戦ですか」
「まあ聞くがいい」
何時の間にか元の車椅子に戻っているエンペライザーの上にマントを羽織ったまま座りながら小田切君に声をかける。
「よいか、実験もまた芸術だ」
「初耳ですが」
小田切君はそう博士に言い返す。
「誰の言葉ですか、それって」
「この世で最も偉大な科学者の言葉じゃ」
「ハ○○ー教授はそんなこと言っていませんよ」
「フン、戯言を」
○スラ○教授という名に対して冷笑を向けて応える。
「あんなコンピューターに顎で使われる三流の教授と一緒にするな」
「じゃあ誰なんですか」
「君の目の前におる」
こう豪語してきた。
「その天才科学者が言うのじゃ。知能指数二十万のな」
「はあ、そうですか」
返事に力がこもっていない。心の底からどうでもいいといった感じだった。
「それでじゃ。実験をな、派手にやる」
「今までも随分派手じゃないですか」
「だからじゃ。もっと派手にやるのじゃ」
何かよからぬことを考えているのは間違いなかった。そもそも単なる実験に作戦とまで名付けるのは宇宙でもこの博士位であろう。あらゆる意味で困った人物であった。
「よいか」
「悪いって言って聞きます?」
「さてな」
これが返事だった。
「そんなことはどうでもいいのじゃ。それでじゃ」
無茶苦茶な話は続く。
「予定通り竹島で実験をやる」
「だから博士、それは」
流石に止めようとする。
「外交問題になりますよ」
「気にするな。些細なことじゃ」
こうしてチタデレ作戦を翌日発動させた。新聞やネットどころか世界中がまたしても大騒ぎになったのは言うまでもない。つくづく滅茶苦茶な博士だった。
第二十九話 完
2007・4・25
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