第二百五十八話
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第二百五十八話 障害物も使って
「それでだよ」
「ああ」
ライゾウはタロのその話を真面目に聞いている。彼も自分が言うばかりではないのである。タロの話も聞いている。これは華奈子に対しても同じである。
「ただ走るばかりじゃね」
「物足りないっていうのかよ」
「だってさ。僕達は使い魔じゃない」
「ああ、だから修業をな」
「それだったら思い切ったことをしようよ」
「思い切ったこと?」
そう言われてもである。ライゾウは首を傾げさせてそのうえでタロに言葉を返すのだった。
「ただ走るんじゃなくてね」
「どうするんだよ、それで」
「障害物競走みたいにしようよ」
「障害物かよ」
「屋根の上とかさ。そうしたところを走っていかない?」
「道だけじゃなくかよ」
「そう、例えば」
ここでさらに言うタロであった。
「川を泳ぐとか。ライゾウ泳げるよね」
「ああ、泳ぐのは得意だぜ」
猫であるがそれもいけるのである。実際に箱の中で川に流されるだけの猫を何度も助けたことがある。そうしたこともするライゾウなのである。
「それもな」
「じゃあ丁度いいじゃない。それだとしっかりとした修業になるよね」
「そうだよな。言われてみれば」
「激しい運動でもあるし」
「油断したら怪我するから精神的な鍛錬にもなるしな」
言われてそのことにも気付くライゾウだった。
「それだといいか」
「うん、それでどうかな」
「よし、乗ったぜ」
ライゾウは笑顔でタロに言葉を返した。
「おいらはそれでいくぜ」
「それじゃあそれでいいよね」
「ああ、是非な」
ライゾウは笑ってこう返したのであった。彼にとっても望むところであった。
「それでな」
「早速はじめる?」
「えっ、早速かよ」
「僕はそれでいいけれど」
タロはこう言ってきたのだった。
「ライゾウはどうなの?」
「まあおいらもな」
ライゾウはその首を傾げさせて述べてきた。
「今からでもいいけれどな」
「じゃあそれでいいじゃない」
「ああ。それにしても」
「それにしても?」
「話の展開が早いな」
こう言ってきたのである。
「何かな」
「それでいいじゃない」
それでいいと返すタロだった。何はともあれ二匹の修業がはじまった。
第二百五十八話 完
2010・1・24
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