第二百二十七話
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第二百二十七話 博士動く
博士はゆっくりと動きだした。そうして、であった。
「それではじゃ」
「どうするんですか?それで」
「まずはワインでも飲むとしよう」
何と酒を飲むというのである。ワインであるが酒は酒である。
「ゆっくりとのう」
「飲むんですか?」
「そうじゃが」
いぶかしむ小田切君に対して平然と返してみせてきた。
「何かおかしいのかのう」
「おかしいっていいますかね」
小田切君は戸惑いながら博士に対して述べる。
「あの娘達に何かしないんですか?」
「するぞ」
それはするというのである。しかしその口調は変わらない。相変わらずといった調子である。
「ちゃんとのう」
「ですがお酒って」
「わしが動かずともじゃ」
こんなことを言い出すのであった。
「やれることは幾らでもあるじゃろう。違うか?」
「幾らでもですか」
「エンペライザーを出す」
それだというのである。あの恐ろしい性能を持つ脅威のマシンである。
「あれを出しておくからのう」
「エンペライザーですか」
「あれなら大丈夫じゃ」
己の開発したそのマシンには絶対の自信があるのだった。そしてその性能は実際にその自信に見合うものがあるから余計に問題なのである。
「ちょちょいとじゃよ。追っ払うのじゃ」
「殺してしまいません?」
小田切君はそれが気になった。何しろこの博士の作るものといえばどれもそれこそ国の二つや三つは瞬く間に破壊してしまうからだ。危惧するのも当然であった。
「あの娘達を」
「あの娘達も馬鹿にできん」
だが博士はこう返したのだった。
「手強いぞ」
「手強いですか」
「だからじゃよ」
そのうえで出した言葉である。
「エンペライザーなのじゃよ」
「スペードのエースをですか」
「左様。エースを出したのじゃ」
博士の言葉は真剣なものであった。
「わかっておるからじゃ」
「それじゃあ博士」
「さて、あの娘達はじゃ」
実に楽しみであるような言葉であった。
「わしのエンペライザーをどう防ぐかのう」
「それを見ながらのワインですか」
「チーズはカマンベールじゃ」
酒のつまみはそれだというのである。そうして小田切君だけではなくライゾウとタロも呼んでそのうえで観戦としゃれ込むのであった。
第二百二十七話 完
2009・10・13
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