第二百十一話
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第二百十一話 小田切君の好物
小田切君はビールを飲んでいる。そして飲んでいれば当然ながら一緒に食べるものもある。つまりつまみであるがそのつまみは。
「枝豆か」
「ええ、これ好きなんですよ」
にこにことして枝豆を食べながら博士に応えるのだった。
「もうね。これとビールの組み合わせになると」
「ふむ。そんなにいいものか」
「いいものかって博士」
今の博士の言葉には無意識のうちに怪訝な顔になった小田切君だった。
「枝豆食べたことないんですか?」
「あるぞ」
こうした返答は返って来たのだった。
「当然のう。美味いものじゃ」
「けれど枝豆とビールの組み合わせは食べたことがないんですか」
「うむ、ない」
はっきりと答えてきた博士であった。
「枝豆にはいつも白ワインじゃ」
「枝豆に白ワインですか」
「いいものじゃぞ」
博士はまた小田切君に言うのであった。
「この組み合わせがのう」
「そんなにいいんですか」
「和食には白ワインじゃ」
博士はその範囲も広げてきた。
「和食全体に合うのじゃよ」
「そういうものなんですか」
「日本酒と同じようなものと考えればいいのじゃ」
「そんなもんですかね」
そう言われても今一つ実感できない小田切君であった。ビールを飲みながらそのうえで腕を組んで首を傾げてさえいるのだった。
「日本酒とって」
「欧州では白ワインは海のものに使うじゃろう」
「ええ、そうですね」
小田切君にもこれはわかった。
「それじゃあ和食はやっぱり魚ですから」
「そうなるのじゃよ。牡蠣にも同じじゃよ」
「成程、牡蠣と」
「じゃから」
ここでその白ワインを出す博士だった。
「わしはこれをやることにする」
「その白ワインですね」
「フランス産じゃ」
フランスのワインというのである。
「それもシャンパンじゃが。どうじゃ?」
「えっ、シャンパンって」
シャンパンと聞いた小田切君の言葉が止まった。その顔の動きも。
「まさかと思いますけれど」
「遠慮はいらんぞ。どうじゃ?」
「そうですね」
流石にシャンパンを勧められると小田切君も尋常ではいられなかった。心が揺れ動いていた。
第二百十一話 完
2009・8・17
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