第百九十四話
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第百九十四話 アルバイト募集
「で、まあ小田切君さ」
「とりあえず貼り紙からなんだね」
「うん、じゃあ貼っていこう」
博士がアルバイトを募集することになり小田切君は早速ライゾウ兄とタロ弟を連れて街に出る。その手には貼り紙とテープがある。
「一枚一枚ね」
「あとインターネットのサイトでも求人は出したし」
「他にはアルバイト雑誌でも求人広告出したしね」
「それでも来るかなあ」
しかし小田切君はここでぼやくのだった。
「果たして誰か。来てくれるのかな」
「絶対に来ないと思うよ」
「僕もそう思うよ」
二匹はこう小田切君に対して答えた。
「だってあの博士の研究所だろ?」
「どんなに困ってる人でもまずね。来ないよ」
「うちの博士は世界的に有名な人だからなあ」
悪名という意味である。
「それこそ。各国語にしてそのうえでネットにも雑誌にも出してるけれど」
「それでも絶対に来ないって」
「小田切君だってよくいると思うよ」
「そういえば辞めようって思ったことないな」
小田切君はふとこのことに気付いたのだった。
「南極に隔離されたり得体の知れない物体にまで変えられた死体を捨てさせられたりしたけれどね」
「普通の人間そこまで経験しないよ」
「っていうかあの博士の名前見ただけで皆逃げるから」
それが普通の人である。
「どんな殺され方するかわからないから」
「もう側にいるだけで」
「そういうことをするのはあくまで不良とかチーマーとか暴走族とかヤクザ屋さんとかだけだけれどね」
つまり博士はそういう職業の人種が嫌いなのである。
「それでも皆来ないからねえ」
「だから今回も絶対に来ないって」
「来たら僕達驚くよ」
ライゾウ兄もタロ弟も遠慮なく言う。
「本当によ。貼り紙貼ったらそこには烏さえ近寄らないぜ」
「子供も逃げ出すよ」
「だよなあ。絶対に来ないね」
小田切君もそれは確信していた。
「まあそれでも。やってみるかな」
「とりあえず時間はあるからな」
「貼っていこうよ」
「そうだね。仕事だしね」
小田切君は二匹の言葉に応えて述べた。
「一枚ずつね。丁寧に貼ってくか」
「そうそう、地道が一番だからな」
「じっくりしていこう」
「何か研究所に入ってはじめて聞く言葉だね」
このことも今気付いたのだった。
「まあそれが僕の座右の銘だけれどね。焦らずコツコツ地道に」
「今全然離れてるけれどな」
「それでもなんだね」
「うん、そうだよ」
そんなことを二匹と話しながら今は貼り紙をしていくのだった。とりあえず今は地道な小田切君だった。
第百九十四話 完
20
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ