第百八十八話
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第百八十八話 滝にて
その滝がいよいよ近付こうとしていた。美樹以外の面々の顔が強張っていく。そして皆その顔で美樹に対して言うのであった。言わずにはいられなかった。
「それでもうすぐ滝だけれど」
「任せたわよ」
「ええ」
美樹一人悠然としていた。
「わかってるわ。それじゃあね」
「ここで魔法を使うのよね」
「ええ」
それは最初から皆読んでいたことだった。
「そうよ。風の魔法ね」
「それはわかるんだけれど」
華奈子は眉を顰めさせ首を捻りながら言うのだった。
「一体どうやって使うのかしら」
「そうよね、風はわかるんだけれど」
「一体」
赤音も梨花も美樹が今何を考えているのかわかりかねていた。しかし美奈子がここで何とか落ち着いた顔になって彼女に話すのだった。
「あれ、するのね」
「そうよ、あれよ」
美樹はここでも明るい顔であった。
「それをするのよ」
「そうなの。わかったわ」
これで納得した顔になった美奈子であった。
「それじゃあ安心してね」
「美奈子ちゃんにはわかったみたいね」
「そうみたいね」
赤音と梨花は美奈子の顔が今は晴れ渡ったものになったのを見てまた言い合った。
「けれど何をするのかしら」
「このまま滝に行っても」
「ヘリコプターよ」
美樹が言った。
「ヘリコプターをするのよ」
「ヘリコプターって」
華奈子はまた首を傾げるばかりだった。
「何、それ」
「だから。こうするのよ」
言いながら自分の杖を高々と掲げる美奈子だった。
「こうしてね。ほら、少し大きな竜巻出来たわよね」
「ええ、確かにね」
見ればボートの上にそれが出来ていた。見ればそれは威力はそれ程でもない、穏やかな竜巻であった。ただし大きさはボートに丁度という位だ。
「この竜巻よね」
「これをボートの下にやって」
実際に竜巻は移動しだした。水を跳ね除けてボートの下に。
するとボートは自然に浮かび上がったのだった。それはまさにヘリコプターだった。
「浮いてるじゃない」
「これって」
「そういうこと。ホバークラフトみたいだけれどまあヘリコプターの方が近いから」
美樹は笑って皆に話す。
「だからヘリコプターって言ったのよ」
「成程ね」
皆ここでやっとわかったのだった。そうして空中を竜巻で浮かび上がりながらそのうえで宙を舞うのだった。そうして滝を降りていった。
第百八十八話 完
2009・4・27
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