第百七十六話
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第百七十六話 ここでも持って来ていて
ジャングルプールの中を進みはじめた二人。河そのものに見えるプールを泳いでいく。左右に見えるのはジャングルの木々である。プールの中にもある。
「あの木ってひょっとして」
「本物ね」
美奈子が華奈子の言葉に答える。
「間違いなくね。アマゾンをイメージしてるわ」
「アマゾンね」
アマゾンと聞いて華奈子の顔が曇る。
「じゃあ河の中にピラニアとかいるの?」
「流石にそれはないわよ」
ただしプールから浮かび上がるCGの小魚や鰐や蛇の類は一杯泳いでいる。それがまた独特の雰囲気を演出していて現実感を出していた。
「それはね」
「いたら人が食べられるわね」
「そうよ。まあこのCGはよくできてるけれどね」
「出来過ぎじゃないの?」
華奈子は目の前に巨大なピラルクを見ていた。
「CGはCGでもホノグラフィーだし」
「透けて通ってくれるけれどね」
「それでも」
迫力はそのままだった。その巨大ピラルクは二人を通り抜けてそのまま二人の後ろへ泳いでいく。
「凄い迫力」
「確かに」
美奈子もそれは完全に同意だった。
「他にアナコンダもいるわよ」
「あの二十メートルはあるっていう蛇ね」
「一説には、だけれどね。その大きさは」
「いるの、その大きさのが」
「そうらしいわ」
この辺りは実際に見ていないので美奈子にもわからないのだ。
「そういうのもCGで出て来るわよ」
「期待したいけれど怖いわね」
華奈子は泳ぎながらその喉をごくり、と鳴らして述べた。
「ちょっとね」
「そうね。私も」
「そうなの」
美奈子の言葉に応えたところで気付いたことがあった。
「そういえば美奈子」
「何?」
「ここでも浮き輪なのね」
見れば浮き輪の中に入ってそうやって華奈子と一緒に泳いでいた。
「ここでも」
「だって仕方ないじゃない」
華奈子の言葉に口を尖らせて反論する。
「泳げないんだから」
「けれど格好悪いわよ」
「それでも泳げないの」
また口を尖らせて言い返す。
「だからいいでしょ。浮き輪は」
「まあね」
わかっているからそれ以上言いはしない。
「とにかく。四人をね」
「探すのね」
何はともあれそれであった。今は河そのままの曲がりくねったプールを二人並んで泳ぎながら仲間達を探す二人であった。
第百七十六話 完
2009・2・25
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