第百七十二話
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第百七十二話 とりあえず休んで
「まあとにかくね」
「ええ」
華奈子は不意にといった感じで話を変えてきた。
「今は休みましょう」
「休むの」
「あまり疲れても何にもならないわ」
こう言うのである。
「疲れて泳いだら溺れたりするし」
「わかったわ。それじゃあ」
「とりあえず。何か飲む?」
あらためて美奈子に問うた。
「ジュースか何かでも」
「ちょっと身体が冷えたし」
温水プールでも水は水である。それで身体が冷えてもいた。
「温かいものがいいわ」
「じゃあコーヒーか紅茶ね」
「ココアにしない?」
美奈子はココアを提案した。
「あれだとゆっくり飲めるし。それに美味しいし」
「そうね。あたしもココア好きだし」
華奈子もココアは好きだった。家では美奈子と二人でいつも飲んでいたりする。
「それじゃあね」
「ええ。ところで」
美奈子はココアを飲むと決まったところでプールから岸辺にあがりながら華奈子に尋ねた。
「皆は?」
「皆って?」
「だから梨花ちゃん達よ」
言わずと知れた彼女達の仲間である。
「皆は何処行ったの?」
「皆はジャングルプールの方にいるわよ」
華奈子はこう美奈子に答えた。
「皆ね。そっちに行ったわ」
「そう、そっちに行ったの」
美奈子は華奈子の言葉を聞いてそれで頷いた。
「そっちにね」
「後であたし達も行く?」
「私達も?」
「ココア飲んでからね」
これは忘れなかった。華奈子は食べ物や飲み物のことは決して忘れないのだ。
「行く?皆いるし」
「そうね」
美奈子もそれを聞いて頷く。
「皆もいるなら」
「もっともそこで魔法は使えないけれど」
「当たり前よ」
今の華奈子の言葉にはこのプールでははじめてお姉さんの顔になった。
「ジャングルっていったら緑で一杯じゃない」
「ええ」
「そんなところで火なんて使ったら」
華奈子の魔法は火である。木にそれが燃え移ったらどうなるかは自明の理であった。
「流石に使わないとは思うけれど」
「勿論よ。けれど」
魔法を置いてもだった。
「ジャングルプール。楽しみよね」
「それはね」
そのことは純粋に楽しみな二人だった。だが今はココアであった。二人仲良くココアを飲みに流水プールを後にするのだった。
第百七十二話 完
2009・2・23
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