第百七十話
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第百七十話 実際に泳いでみても
「とにかくね」
「泳げって?」
華奈子はまだ美奈子に言っていた。浮き輪に腰を入れて浮かぶ彼女の横で泳ぎながら。
「二キロも?」
「休みながらでいいから」
「だから無理よ」
あくまでこう言って乗ろうとしない美奈子だった。
「二キロもって。とても」
「ここなら大丈夫じゃない」
華奈子はどうしてもという美奈子に対して言葉を変えてきた。
「この流水プールならね」
「このプールならね」
華奈子はさらに言ってきた。
「それによ」
「それに?」
「浮き輪も付けて」
浮き輪を見ての言葉だった。
「それだと絶対に大丈夫じゃない。どう?」
「浮き輪があったら」
美奈子もやっとまんざらではなくなってきた。
「そうね。それだと」
「やるのね」
「二キロもいけるかはわからないけれど」
それでもまだ弱気ではあった。
「じゃあ。浮き輪も一緒だったら」
「やるのね」
「ええ」
やっと頷く美奈子だった。ようやくではあった。
「それじゃあ。とりあえずは」
「さあ、泳ぎましょう」
華奈子は浮き輪から出てそれを頭から被りだした美奈子に話した。
「早速ね。競争はやっぱり」
「それは無理だから」
競争については全拒否であった。有無を言わせない口調だった。
「はっきり言って」
「だからそれは言わないから」
「だったらいいけれど」
それでもまだ不安そうな美奈子である。運動の類では華奈子にはどうしても勝てないのは彼女が一番よくわかっているのだ。もっとも勉強ではそれが逆になるのだが。
「じゃあ二キロね」
「そう、二キロ」
華奈子は明るい顔で美奈子に話す。
「行くわよ」
「とりあえずやってみるわ」
美奈子はとりあえず手足を動かしだした。
「はじめてみないとどうしようもないからね」
「そういうこと。千里の道も一歩から」
華奈子も言う。
「だから」
「そうね。やってみないとね」
そう言い合いながら泳ぎはじめる二人だった。二人は学校のスクール水着ではなく今流行の半ズボンタイプの水着だった。華奈子は赤で美奈子は紫、この辺りの色は法衣と同じだった。
第百七十話 完
2009・2・22
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