第百六十九話
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第百六十九話 少しだけバカンス
博士がまたしても恐ろしいことを平然と行っていたその時。クラウンの面々は先生の家であり塾でもあるその屋敷の近くにあるプールで楽しい時間を過ごしていた。
「ねえ美奈子」
「何?」
流水プールの中で華奈子が美奈子に声をかける。
「最近結構暇よね」
「そうね」
美奈子は浮き輪に腰を入れてそれでぷかぷかと浮かびながら横で泳いでいる相方に応えた。
「確かに。最近はね」
「博士も大人しいし」
「今のところはね」
限定ではある。
「けれど大人しいのは確かよね」
「このままずっとの筈がないけれどね」
「それは絶対に有り得ないわ」
美奈子も断言してきた。
「それはね」
「あの博士に限ってね」
「あの博士は特別よ」
特別どころではないがこう言う美奈子だった。
「もう何が何だか」
「何時何をしてもおかしくないわよね」
「本当にね。今度は何をするのやら」
美奈子は一体全体次は何が起こるのやらと考えだしていた。二人はそのままプールの中で楽しくやっている。だが完全にリラックスもできない状況でもあるのだった。
「いきなり国会議事堂を爆発させるとかかしら」
「それで生易しいって思えるわよね」
「そうなのよね」
博士にとってはそんなことは道を歩いていて石を蹴飛ばすようなものでしかない。
「そんな大事でもね。あの博士はね」
「今この瞬間にも何をしてるかわかったものじゃないけれど」
華奈子の勘はやはり鋭い。
「とりあえずは今はね」
「ゆっくりと心を休ませてね」
「そういうこと。それでね、美奈子」
「ええ」
「泳ぐ?」
華奈子はこう相方に尋ねた。
「ちょっとばかり。どう?」
「泳ぐって?」
「一キロ位泳がない?それか二キロでも」
「二キロって」
その距離を聞いてうんざりとした顔になる美奈子だった。
「私はそんなには」
「泳げないっていうの?」
「無理よ」46
今度は困った顔になっていた。
「そんなには、私にはとても」
「そんなのやってみなくちゃわからないじゃない」
「二十五メートルも泳げないのに」
相変わらず身体を動かすことは苦手な美奈子だった。やはり浮き輪に腰を入れてぷかぷかと浮かんでいるのだった。
第百六十九話 完
2009・2・22
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