第百六十八話
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第百六十八話 まだ生きている者がいても
「うう・・・・・・」
「助けてくれ・・・・・・」
組織のビルから声がしてきた。
「蛇が、蛇が・・・・・・」
「まだ生きている奴もいる。だから」
「ほう、生存者がおったか」
博士はビルから人が出て来たのを見て声をあげた。やはり昼食を食べている。ランブルスコワインを飲みつつグラタンやフェットチーネを楽しんでいる。
「運がいいのう」
「それでどうするんですか?」
「決まっておる」
また小田切君に言葉を返す。
「わしの蛇達から逃れることはできぬ」
まずはこう言うのだった。
「一噛みで死ぬ。どの様な生き物でもな」
「じゃああの人達も」
「うむ、死んでおる」
どのみち逃れられないなどと生易しいことは言わないのであった。
「既にのう」
「そうですか。じゃあ」
「見るのじゃ、小田切君」
博士はここで小田切君にその組織の人間を見るように告げた。
「ならず者国家の僕共の末路をのう」
「末路って」
言っている側からそのやっと逃げて来た連中の顔や身体が膨らんできた。そうして。
「あろおっ!!」
「ばぼべっ!!」
爆発してしまった。彼等は脳味噌や内臓、鮮血、骨を撒き散らしつつ惨めに死んだのであった。あまりと言えばあまりな末路であった。
「ああなるのじゃ」
「何かの拳法漫画みたいですね」
「一子相伝の暗殺拳じゃな」
史上最悪の拳法である。
「まあそれに近いかも知れん」
「秘孔じゃなくて毒でですか」
「うむ。身体を中から破壊するのは同じじゃ」
博士はこう説明する。
「その辺りはな」
「それでああなるんですか」
「あの断末魔と共に聞こえておった筈じゃ」
博士は今度は鰯を食べていた。
「心地よい爆発音がのう」
「あの音はこれだったんですか」
「さて、後はあのビルは蛇達の巣じゃ」
博士は悠然と言う。
「二万の蛇達のな」
「二万の蛇があそこに巣をですか」
「当然ながら増えるぞ」
生き物だから当然である。
「そしてさらにテリトリーを広げてのう。面白くなるぞ」
「何かまた」
小田切君は博士の得意げな言葉を聞いて暗澹たる顔になって呟いた。
「ゴッキローチみたいなことになってきたな」
その通りだった。またしても騒動が起こるのであった。
第百六十八話 完
2009・2・20
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