人の子は上位に手を出すべからず
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車の速度よりも早いのではないかというほどのものであった。
青年はその程度は予測していた、とでも言わんばかりに、矢をつがえながら左にスッと移動する。
耳に熱いものを感じた。
何かが少しずつ下に向かって垂れている。完全に躱したつもりだったが、わずかながら耳を切られたらしい
だが、そんなものは関係ない。自分の一瞬前までいた場所を駆け抜けた狼を射貫こうと弓を向けたがその行動が間違いだったということを悟った。
なぜならあれほどの速度を出していた狼が、先ほど射抜かれたはずの右前足を軸に半回転して再び自分に向かって駆け出していたからだ。
「チッ」
舌打ちを思わずしてしまっていた。
ここまで速い生き物と殺りあったことなど一度もなかった。
ただただ厄介なことには間違いがない。
勝てる要素も全くと言ってないだろう。足でまといだといったはずなのに、まだ彼女がいる。
あちらを狙われては守りきれないし、これだけ速い生き物が相手だと誤射の可能性があるのでそちらに弓を向けられない。
彼は弓矢を左に向かって投げると、腰に帯びていた打神鞭を抜き、右手でそれをかけてくる狼に向けて構えた。
だめだ、本当に先輩の足でまといになってる。
手助けするなんて考えていた自分が馬鹿みたい。
先輩やあの生き物の速度を私は捉えられない、最初はただただ心に深く突き刺さっただけだったけど、この光景を見ていると自分がどれだけ邪魔かっていうのがわかる。
「先輩、ご武運を・・・・」
私はそこから逃げ出すようにして駆けていた。
あいつは行ったか、打神鞭でなんとか先ほどの狼の突進をそらしたものの、手がしびれた。
あとどれだけ戦えるかは分からないが、最悪でもこいつを道連れにする。
「本気で行こうか」
彼は再び腰に打神鞭を帯びると、投げた弓矢を拾った。
つがえて、放つ。
先ほどまでとは違い一度放つと何本もの矢が飛んでいく。
誰にも言ったことはないが、もともと俺の体は弱かった。だから、それを隠すためにも短期決戦や策略、技術を磨き上げた。だからこそいろいろなことができるようになった。
「喰らいな」
いっぺんに何本も矢を放てば雨のようになる。
少しずつでも削って倒してやる。
100本以上は矢があるんだ。なんとかなるだろ。
彼は先ほど放った矢が狼との距離の半分もいかない間から、第二射目の攻撃を行なった。
もちろん、いっぺんにたくさんの矢をつがえさせているのだが・・・。
躱すのか?
それともあえて受けて突っ込んでくるのか・・・・。
どちらにせよ、雨はしばらく止まないけどな。
数十分後、すでにお互いが満身創痍だった。
狼にとって誤算だったのは矢の威力の高さだろう。
最初の時にあえて受けながら突っ
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