第百六十三話
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第百六十三話 考えてみれば今でも
終戦直後の博士の行いは非道の極みと言っていいものであった。しかし少し考えてみればそれは終戦直後だけではないのがわかるのだった。
「よく考えたらさ」
「だよなあ、旦那」
ライゾウはタロの言葉に対して頷いていた。
「今だって。そうなんだよな」
「そうだよね。今だってね」
そうなのであった。実は。
「やってることっていえば」
「生体実験にとんでもない兵器の開発」
それがこの博士の趣味である。
「そういうのばかりだし」
「全然変わってないよな」
結局はそうなのであった。
「昨日だってあれだろ?」
「暴走族相手にね」
博士は暴走族が嫌いである。何故嫌いかというと皆の迷惑になる存在だからではない。博士はそういった理由で動く人間では決してない。
「蛇の大群を連れて行ってね」
「一万匹だったっけ」
「ううん、二万匹」
「また随分な数になったんだな」
ライゾウは二万と聞いて呆れてしまった。
「二万の蛇に襲わせたのかよ」
「しかもその蛇は全部毒蛇だったんだ」
「やっぱりな」
これはすぐに予想がついた。あの博士が毒を使わない筈がないからだ。
「じゃあその毒蛇の群れに包み込まれて」
「全員死んだよ」
結果は最早言うまでもないのだがタロはあえて言った。
「あちこち噛まれてそのうえ穴という穴から身体の中に侵入されてね」
「うわ、最悪な死に方」
誰もが聞いただけで寒気がする末路である。
「そりゃまたえぐいな」
「何でも噛まれたらそれこそ何時間も苦しみ抜く猛毒の毒蛇なんだって」
「そんな毒蛇いたっけ」
とりあえずライゾウは毒蛇については詳しくなかった。知っているといえば精々キングコブラや日本にいる毒蛇位である。まあ普通程度の知識だ。
「何時間もって」
「台湾の方からヒャッポダ輸入したんだって」
「ヒャッポダ!?」
「そう。噛まれたら百歩で死ぬ猛毒の蛇」
実在の蛇である。
「それを改良したんだって」
「改良ねえ」
そう言っていいのかどうか迷う話であった。
「とにかくその毒蛇でね。暴走族を百人ばかりね」
「殺戮したと」
「そう。いつも通り」
やはり博士は博士であった。そしてこの蛇達でまた恐ろしい行動を取るのであった。
第百六十三話 完
2009・2・18
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