第百五十二話
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第百五十二話 味覚については
小田切君の生まれもわかった。先生はそのうえであることを彼に尋ねてきた。
「名古屋ですよね」
「はい、そうです」
「名古屋でしたら」
前置きの後で小田切君に対して問うのである。
「あれですね。赤味噌ですよね」
「ええ、そうです」
小田切君も先生の言葉に頷く。まるでわかっているように応えるのだった。
「もう何でも味噌です」
「そうですよね。名古屋にも何度も行ったことがありますけれど」
「名古屋に行かれたことがあるんですか」
「お仕事で」
こう小田切君に答える。
「それで何度も」
「そうでしたか。お仕事で」
「いつもきし麺を食べています」
今度話に出たのはこれだった。
「ういろうも海老も」
「ええ、それなんですよ」
小田切君はきし麺に続いてそういったものも話に出すのだった。話にいい具合に乗っていた。ただし小田切君自身はそれに気付いてはいない。
「名古屋はね。後は」
「味噌カツですよね」
「どうですか?そういうのは」
「美味しいです」
満面の笑みで答える先生だった。
「どれも。名古屋に行くと楽しみですね」
「一人だと結構それなんですよ」
小田切君は自分自身についても述べた。
「きし麺買って。カツには名古屋からネットで買った味噌で」
「あとういろうもですよね」
「はい、それもです」
饒舌に語る小田切君だった。
「海老もあって。やっぱりそれですよね」
「それでは天麩羅うどんも」
「味噌煮込みうどんも好きですよ。やっぱりいいですよね」
「そうですね。どれも」
「博士はあまり和食食べないんで」
博士についても話す。
「それでアパートだとそうなんですよ。名古屋尽くしです」
「名古屋。お好きなんですね」
「故郷ですし」
語るその目が暖かい。
「好きですよ。やっぱり」
「そうですね。では機会があればやっぱり」
「はい。帰っています」
笑顔で先生に答える。
「いつも。時間があれば」
「そうですか」
故郷をこよなく愛する小田切君だった。彼にもそういったものはあり愛しているのであった。
第百五十二話 完
2008・11・25
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