第百四十七話
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第百四十七話 小田切君と先生
「お茶ですけれど」
「お抹茶ですか?」
「あっ、いえ」
今のは先生の天然だった。小田切君もそれを受けてかなり戸惑いはした。しかしすぐに体勢を立て直してまた言うのであった。意外とめげない。
「そうではなくてですね」
「ではどのお茶ですか?」
「紅茶です」
こう先生に言うのだった。だが何処か先生のペースに入ってしまっていた。
「紅茶ですけれど」
「紅茶ですか。コーヒーではないのですね」
「勿論コーヒーもあります」
やはり先生のペースに巻き込まれてしまっている。
「それもありますが」
「コーヒーもですか」
「そうです。喫茶店です」
あらためて先生に対して言った。
「喫茶店ですけれど。どうでしょうか」
「そこにはお抹茶はあるでしょうか」
「喫茶店にお抹茶ですか」
「はい」
にこやかな笑みで答える先生だった。
「そうです。そこにお抹茶はありますか?」
「ええと。確か」
完全に洋風のアンティークなお店である。少なくとも和風が似合うお店ではない。小田切君はそのことを思いつつ頭の中でどうするべきか考えていた。具体的には何を言うべきかだ。
「なかったですけれど」
「それではですね」
今度は完全に先生のペースになっていた。
「一つ。いいお店を知っていますよ」
「お抹茶が出るお店ですか」
「はい、そうです」
やはりにこやかに笑って答える先生だった。
「あります。如何ですか」
「そうですね。お抹茶ですか」
実は紅茶だけを考えていた。しかしお抹茶と聞いても別に駄目だという気も起こらなかった。実はそちらも好きな小田切君なのである。
「宜しければ」
「有り難うございます。それではですね」
「ええ」
その笑みで小田切君の言葉に応えてきていた。
「御願いします」
「いいお店なんですよ」
にこやかな笑みのままでまた小田切君に言ってきたのだった。
「そこは」
「そうなんですか」
「はい。ですから御一緒に」
「わかりました。それでは」
「こちらです」
こうして先生に案内されてそのお店に向かうことになった小田切君だった。本当に気付けば完全に先生のペースに入ってしまっていたのだった。
第百四十七話 完
2008・11・13
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