第百四十三話
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第百四十三話 雨の結果
その怪しいどころではない雨の結果。半島の北半分は恐ろしいことになっていた。
「うわ・・・・・・」
「見事に禿山だらけ」
ライゾウ兄もタロ弟もテレビを観て唖然としている。そこに移るのは本当に草木が一本もなくなってしまった半島の北半分だったのだ。
「物凄い威力」
「それどころじゃないね、これは」
「素晴らしいじゃろ」
博士だけが誇らしげに胸を張っている。
「わしの発明は。また大成功じゃよ」
「っていうか博士」
「野生動物はどうなったの?」
「ん!?そんなもん最初から考えておらんぞ」
これが博士の返答だった。そもそも人権すら完全に無視するのに野生動物のことまで考えている筈がなかった。当然環境についても関心はない。
「一切な」
「一切って」
「酷過ぎるんじゃ」
「そもそもあそこに野生動物なんぞもうおらんわ」
そして今度はこう言ってきた。
「一匹もな」
「そうかなあ」
「幾ら何でもそれは」
「あれだけ食糧危機だったのじゃぞ」
それで有名な国でもある。それで日本のテレビ局が餓えた子供達の映像をながし援助を煽ったこともある。その援助物資は全て軍に行った。
「おるわけないじゃろうが」
「鼠一匹も?」
「人が飢え死にしておるのじゃぞ」
これがあの国の現実である。
「そんなもん。いたらとっくに食われておるわ」
「何かさ、それって」
「大航海時代の船みたいだよね」
二匹はその国の話を聞いて言い合った。
「そうだよなあ。凄い国だよ」
「博士の方がずっと凄いけれど」
「だからじゃ。元々禿山だらけじゃったしな」
「木までなかったんだ」
「本当に何もなかったんだ」
「だが。わしの雨はそれでもじゃ」
しかしそれでも力説するのである。
「土を毒の土にし川を汚し尽くす」
実に最悪である。
「これで百年は使い物にならぬぞ」
「やっぱりこの博士ってさ」
「どうにもならないんだね」
二匹はあらためてこのことを認識した。
「どうなることやら」
「既に最悪の結果になっているけれど」
「さてと。次はじゃ」
二匹の話を他所に博士は次の発明のことだけを考えていた。もう雨のことは輝かしい栄光の一ページになってしまっていた。
第百四十三話 完
2008・11・4
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