第百二十七話
[8]前話 [2]次話
第百二十七話 そのロボット
「うわああああああああああああっ!」
「に、逃げろーーーーーーーーーーっ!」
「殺されるーーーーーーーーっ!」
「ふははははははははははは!怖かろう!」
今日はその鉄人みたいな巨大ロボットを不良の溜まり場の高校に向けて悦に耽っている博士であった。丁度今校舎がパンチで潰されている。
「この鉄人は無敵じゃ!不死身じゃ!」
「不死身なんですか」
「左様」
横で呆然としている小田切君の言葉にも答える。
「誰も破壊することはできんぞ」
「命ないから不死身じゃないんじゃないんですか?」
「おっと、そうか」
言われてそのことに気付く博士であった。
「ではまあ不滅としておこう」
「不滅ですか」
「見よ」
丁度不良達を手に取ってそれで空中でお手玉をしている。時々間違って地面に落としてしまっている。なおこの鉄人は五十メートルはある。
「あの強さ、あの偉大さ」
「落ちてる人助かりますかねえ」
「まあ無理じゃな」
人命を尊重する博士ではない。
「あの高さからではのう。何か踏み潰してもおるしのう」
「鬼ですね」
「どうせ何の役にも立たん屑じゃ」
またこの論理であった。
「悪さばかりしておる奴等が行く高校じゃよ、ここは」
「だから破壊してるんですか?」
小田切君は問う。
「許せないから。悪事が」
「いや、それは違うぞ」
これははっきりと否定する博士であった。そもそもこの博士自体が人類屈指の凶悪犯であるから悪事を言う資格は一切ないのである。
「それはな。断じて違う」
「じゃあどうして」
「嫌いだからじゃ」
何と理由はこれであった。
「だからじゃよ」
「嫌いだからですか」
「うむ、不良は大嫌いじゃ」
やはり善悪を基準としてはいないのであった。
「だからじゃよ」
「生体実験にも使うんですね」
「あとヤクザ屋に暴走族もな」
こうした連中も博士の嫌いな連中なのだった。それは世の役に立たないからではなくただ博士が嫌いだからだ。実に恐ろしい論理である。
「嫌いじゃよ。じゃからいつも始末したり実験の肥にしておるのじゃよ」
「はあ、やっぱり」
博士のとんでもない論理に呆然とする小田切君だった。しかし呆然とするのは彼だけではなかった。
第百二十七話 完
2008・8・29
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ