第百十四話
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第百十四話 犬なのかどうか
街の不良達を猫の餌にしてしまった博士。今度は犬の餌であった。
「暴走族や不良は猫の餌でしたよね」
「うむ」
「じゃあ犬の餌は何なんですか?」
「あの連中じゃ」
指差したのは暴力団の事務所であった。
「やはり犬も一日餌を食わせていない」
「そうですか」
その方がより貪るからである。しかも今回はそれだけではなかった。
「だが相手は暴力団じゃ」
「はい」
小田切君もそのことはわかっている。少なくとも街の不良や暴走族達とは違う。
「拳銃やら何やら持っておる。例え人を襲い喰らうようにコントロールした犬でも拳銃が相手では危険じゃ」
「何か方法がありますか?拳銃に対しては」
「これじゃ」
出して来たのはカプセルであった。
「これを使う」
「何ですか、それは」
「毒ガスじゃ」
またしても国際法を平然と破る兵器を出してきた。
「かなり強力な麻痺ガスじゃ。これを事前に暴力団の事務所に撃ち込む」
「まずはそれですか」
「そのうえで犬達を事務所に突撃させる。後はお楽しみじゃ」
「お楽しみですか」
「暴力団以外の生物は食わぬように仕込んである」
そうしたところも徹底していた。無用な犠牲は避けるというのだ。
「何もかもな。万全じゃ」
「じゃあまずは麻痺ガスをですね」
「そうじゃ。ほれっ」
そのカプセルを暴力団の事務所に向かって投げ付ける。すぐに防弾ガラスを破って中に入り忽ちのうちに断末魔を思わせる悲鳴が聞こえてきた。
「後は犬達を送って終わりじゃな」
「そうですか」
「うむ。これで餌の問題は解決じゃ。動物園もこうすれば餌に困らんのだがな」
「そんなことできる訳ないですよ」
小田切君は顔に汗をたれ流させつつその言葉に応えた。
「とても」
「ゴミを処理するのにか」
「人間ですから」
「人間だろうとゴミはゴミじゃ」
こう言い切るところが博士であった。
「処理して何が悪い」
「普通の人はそんなこと言いませんよ」
「普通なぞ何も面白くはないわ」
これまた言い切ってみせた言葉であった。
「楽しくやらないとな」
「楽しくって」
「なおあの麻痺ガスは動けなくするだけで目や耳、声は大丈夫じゃ」
博士はさっきの麻痺ガスについて述べてきた。
「しかも痛覚は倍になるからのう。生きながら食われる苦痛も普通よりさらに恐ろしいぞ」
「・・・・・・よくそこまでできますね」
流石に今度ばかりは引く小田切君であった。暴力団の事務所からの断末魔の素敵なハーモニーが聞こえてくるのであった。
第百十四話 完
2008・5・3
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