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戦国異伝
第八十四話 炎天下その十一
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「敵の将は柴田勝家と佐久間信盛じゃな」
「はい、あの二人です」
「あの二人と織田家の武勇を誇る者達が来ております」
「そうじゃな。織田家の武の二人じゃ」
 柴田と佐久間は既に織田家の外でもそう知られていた。その武の凄まじさ故に知られている。まさに織田家の武の二枚看板になっているのだ。
 そしてだ。その彼等が来ているということにだ。六角は言うのだった。
「ではじゃ。将の質はどうにもならん」
「相手の方が上ですか」
「織田家の方が」
「そうじゃ。上じゃ」
 このことを踏まえるしかなかった。六角にしてもだ。何故ならばというと。
「だからこそ我等は近江を追われたのではないか」
「観音寺城のあれですか」
「あの時のことですか」
「あのことは忘れぬ」
 六角にとってはこれ以上はないまでに忌々しいことだ。それ故にだった。
「ならばこそじゃ」
「忘れられませぬな、我等にとっても」
「ではその雪辱を晴らす為にも」
「あの者達は」
「侮ってはならぬ」
 その将の質が高いこと、それはだというのだ。
「侮ればそれで負けじゃ」
「ですな。ではです」
「数に兵の強さと状況は同じで、です」
「将の質はあちらが上」
「ならば我等の利は」
「地じゃ」
 それだとだ。六角は言った。
「我等にあるのはそれじゃ」
「ですな。ここは元々我等の地です」
「言うならば昔から遊んできた庭です」
「その庭ならばそれこそです」
「細かいところまで知っておりまする」
「守るぞ」
 そうするとだ。六角はここで言った。
「よいな。ここはじゃ」
「守り、そうしてですな」
「敵を迎え撃つのですな」
「そうする。川を挟むぞ」
「何と、川をですか」
「川を挟まれますか」
「川を渡ることも考えた」
 この考えもあったというのだ。六角にはだ。
「背水の陣じゃがな」
「しかしそれはですか」
「止められるのですか」
「自らを追い詰めて戦をするのも手じゃ」
 史記にあるその陣をあえて行い己を死地に置き気力を尽くして戦うやり方もあるというのだ。六角も愚かではない。だからこそそれも考えていたというのだ。
 だがそれはだ。彼は捨てて言ったのである。
「しかしそれをしてもじゃ。この状況ではのう」
「ですな。そもそも疲れ過ぎております」
「背水の陣で戦をする程も気がありませぬ」
「ですからそれはです」
「できませぬな」
「その通りじゃ。できんのじゃ」
 そのやり方はだ。とてもだというのだ。
「だからじゃ。ここは川を挟んで戦をしようぞ」
「その川の守りを使われますか」
「それを」
「そうじゃ。川を挟みじゃ」
 そしてだというのだ。
「そのうえで織田家と戦をしようぞ」
「ではそのうえで」
「我等はですな」
「要は勝
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