第八十四話 炎天下その九
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「異様でございます」
「闇の衣なぞです」
「それをいつも着ておるとは」
「忍の者だからでしょうか」
「それ故にでしょうか」
「忍のことは詳しくない」
六角もこう言うのだった。
「しかしそれでもじゃ」
「忍の装束は確かに黒です」
「闇夜に溶け入る色です」
「しかし闇の色のままというのは」
「ありませぬ」
「そうじゃな。闇か」
その闇についてだ。また言う六角だった。
「どういった者であろうな。忍なのはわかるが」
「どうやら伊賀の頭領であっても服部家とは折り合いが悪かった様です」
一人がこう言った。
「それが為に服部半蔵も伊賀を離れた様です」
「して徳川家に入ったのじゃな」
「仕官先も求めていましたし」
「そういうことか。しかしじゃ」
「しかしですか」
「うむ。やはり得体が知れぬ」
それ故にだった。六角はここで言ったのだった。
「あの者の助けは借りずにおいて正解じゃな」
「どうも信用できませぬな」
「やはりあの者は」
「どうしても」
「うむ、できぬ」
まさにそれ故であった。
「ある意味織田家以上にだ」
「して殿」
家臣の中の一人がまた主に言ってきた。
「その織田家ですが」
「まだ動かぬということなら先程話したではないか」
「いえ、そのことではなくです」
家臣はまた違うと答える。
「我等がここで敗れるならです」
「降れと言ってくると申すか」
「織田信長は確かに戦の場では容赦しませぬ」
まさに雷の如く攻めてくる。それが信長の戦い方だ。
だがそれでもだ。戦いが終わればだというのだ。
「ですがそれでもです」
「戦が終わればじゃな」
「はい、それで降れと言ってきます。ですから」
「その時はと申すか」
「そう考えますが」
「したくはないのう」
六角は難しい顔でその家臣に答えた。
「降ることはじゃ」
「ですが殿のお命は」
「助かると申すのじゃな」
「はい、ですからその時は」
「あ奴の下にはつきたくないのう」
これが六角の返答だった。名門の誇り故にだ。
「決してじゃ」
「左様ですか」
「それはしたくないと」
「そう仰いますか」
「それ位なら出家するわ」
これが六角の選択だというのだ。敗れた際はだ。
「そうするわ」
「ですか。では」
「その時はですか」
「敗れたその時は」
「そうする。御主達は好きにせよ」
家臣達の決断はそれぞれに任せるというのだ。
「降るなり出家すうrなりじゃ」
「どちらでもですか」
「好きなのを選べと」
「そう仰るのですか」
「そうじゃ。しかし生きよ」
これはだ。絶対にせよというのがだ。六角の言葉だった。
「それだけはじゃ。絶対にせよ」
「生きよ、ですか」
「そうせよと」
「我等
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