第八十四話 炎天下その六
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「わかったな。だからこそじゃ」
「喉が渇いていてもですか」
「飯を食えと」
「そうしなければなりませぬか」
「そうじゃ。水は少ないがそれでも食え」
とにかくだ。柴田は彼等に食う様に命じた。
「それもたらふくじゃ。よいな」
「わかりました。それでは」
「何とか食います」
「わし等はまだよい」
柴田は己の言葉に従い何とか食いはじめた足軽達にだ。こうも言った。
「まだ涼しい方じゃ」
「えっ、この暑さで涼しいとは」
「ご家老、幾ら何でも強気に過ぎるのでは」
「こんな暑さははじめてです」
「それでそう仰るのは」
「では青を見よ」
これが今の柴田の言葉だった。青といえばだ。
「我等の具足に旗を見よ」
「むっ、我等のですか」
「それをですか」
「そうじゃ。青は木の色じゃ」
五行思想からだ。柴田は話した。
「それに水の色でもあるな」
「はい、水です」
「それに海の色です」
「そういうことじゃ。そういったものの色じゃ」
青はだ。即ちそれだというのだ。
「その色を見よ。涼しくなるな」
「確かに。言われてみれば」
「水の中におる様です」
「それだけで」
「思え。思うことも大事じゃ」
足軽達にだ。こう話していくのだった。
「よいな。青を見よ」
「畏まりました。それでは」
「今はそうします」
足軽達も柴田の言葉に頷く。彼はこう言って足軽達の暑さにうだるその気持ちを宥めた。だがそれでもだ。朝からさらにだ。日は高くなっていく。
その高い日、それに晴れ渡った青い空を見上げてだ。川尻が言った。
「憎いのう、この暑さは」
「全くじゃ。暑いわ」
「暑くて仕方がないわ」
前田と佐々もだ。具足を着けたうえで言う。彼等もそのうだる様な暑さに参っているのだ。
そしてその暑さの中でだ。佐々が言った。
「それは敵も同じにしてもじゃ」
「このままでは戦にならんぞ」
「戦どころではない暑さじゃ」
前田と川尻も佐々に応える。その他にもだ。
城内の足軽達もへ垂れ込んでいる。暑さには勝てなかった。
その彼等を見てだ。柴田はまた叱る。しかしだった。
暑さは否定できなかった。それはどうしてもだ。それでだ。
佐久間がだ。城主の間で柴田にだ。こう問うたのである。
二人共具足の上に陣羽織を羽織っている。何時でも戦に入られる格好だ。そしてその格好で二人向かい合っていた。佐久間はその中で問うたのである。
「今日の昼じゃな」
「そうじゃ、昼じゃ」
柴田は佐久間にもはっきりと答える。
「昼に攻める」
「それはわかった」
まずはだ。佐久間は同僚のその言葉に頷いた。
だがそれでもだ。彼はこう言ったのだった。
「しかし。昼ともなると」
「余計に暑くなるのう」
「しかも水がじゃ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ